社会問題小説・評論板

Re: 私が存在する理由 ( No.18 )
日時: 2011/12/10 21:50
名前: 不登校少女I. (ID: b1TZiT7s)



「姉妹」番外編

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「もう!!お母さん急いでよ!」
「ごめんっちょっとだけ待ってあとファンデーションだけなの!」
洗面所で鏡と対立するお母さん。
「もーーっ!入学式なんだよ?!遅れたらどうするの?!先に下にいってるよ」
「いいわよ」
お姉ちゃんがなくなって2年後—
まだまだ私たちは活気を取り戻してはいなかったが、
少しずつ笑顔が出てくるようになった。

あの日の夜。
近所の人たち、そしてお姉ちゃんのクラスメイト・担任。
親戚、いとこ、その他沢山の方々が来たお通夜に私とお母さんは
涙ボロボロのまま参加した。

お姉ちゃんをいじめていた人たちは、これといって反省した様子は無かった。
それでも、謝りにきた少人数の人たちは頭を下げて謝っていた。
お母さんは怒りと悲しみに震えて泣いていた。
それを支えるかのように、また悲しむかのように傍に寄る祖母。

遺影で微笑むお姉ちゃんに向かって言う。
「お姉ちゃん……ありがとう」

その日の夜、私は眠れずにいた。
何となくお姉ちゃんの部屋に行ったりしては、もう"いない"ということを実感して泣いたりもした。
そして、自分の部屋にいるのが寂しく感じた。
「お母さん、おやすみ…」
リビングで忙しそうに手を動かすお母さんにおやすみと言い、
自室へはいって布団にもぐりこむ。

明日の朝からお葬式の準備で大忙し。
火葬もしないといけないし。
そんなこんなで私は眠気に負けて眠ってしまった。

次の日、私はお母さんに揺すり起こされて目が覚めた。
「いつまで寝てるの。早く着替えなさいっ」
お母さんはもう黒い服の身を包み、いつもよりシンプルなメイクをしていた。
「リビングのソファに服置いてあるからね」
「はぁい…」
目を軽く擦り、なんとなくいつもの流れでお姉ちゃんの部屋を除く。
「そっか…お姉ちゃん…いないんだ」
ごみ箱に捨ててある血のついたティッシュを見るだけであの記憶が蘇る


「何してるのっ!早く着替えちゃってっ」
「あ、ごめん」
リビングに向かい高速で服を着替える。
「着替えたらパン焼いてるからジャム塗って食べて歯磨き!」
バタバタと廊下をはしるお母さん。
「わかってるって」
テーブルに座り、ジャムを塗って早めに飲み込むと喉に詰まったりした。
そうして急いで歯磨きをして髪の毛を整える。

「お母さんーっ用意できたよっ」
「じゃ、行くわよ」
そんなこんなで迎えたお葬式は「こじんまり」としたもので、
親戚、いとこ、おばあちゃんとおじいちゃんと私とお母さんだけだった。

そして2日後。
私は中学校に入学式に向かう途中。
もちろんお姉ちゃんのいた中学校だ。
本当ならば、お姉ちゃんは高1だった。
「お姉ちゃん、行ってきます」
仏壇に手を合わせて、お母さんと中学校に向かう。

「お母さんっ急いで」
「ちょっと待ってー」
「全く…そんなヒール履いて来るからだよっ」
「ごめんって葉月ぃ…」
苦笑しつつ手を合わせるお母さん。

空を見上げると、雲1つなく真っ青だった。
太陽は照って、ちょうどいいくらい。

ふいに風が通り抜けた。

その時—
「頑張って」
不意に耳元でお姉ちゃんの声が聞こえた。



END

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