社会問題小説・評論板
- Re: 私が存在する理由 ( No.29 )
- 日時: 2011/12/14 20:34
- 名前: 不登校少女I. (ID: b1TZiT7s)
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そして放課後—。
戸惑いながら、そして、
篠崎さんに見つからないように教室を出ようとした。
「あ、中山…ちょっと、まじで行くつもりなの?」
廊下をほうきで掃いている篠崎さんに見つかった。
「ひっ…」
お化けを見たみたいな声が出てしまった。
「やめなよ。見つかったらどうなるか分かってるの?」
「そんなの…わかってます…。でも…」
「でも…何?」
肺の隅々まで行きを吸い、
「しっ、篠崎さんにはわからないんだよ!!!
傍観者じゃないっ!!ずっと、ずっと…どんな思いしてたか…。
情けないの!!何も言えない自分が!!
篠崎さんに…私の気持ちなんて、………分からないでしょうっ?!」
「えっ、ちょっ中山……」
ほうきを片手に佇む篠崎さんの前を横切り走っていく。
駅まで全力疾走する。
時々空を見上げて立ち止まって。
それを繰り返しながら駅に着いた。
「あ、雪帆、こっちこっちー」
傍から見れば、普通に仲の良い仲間みたいな集団。
でも、蓋を取れば本当の仲が見えてくる。
「じゃ、説明するね」
「…う…ん」
静かに頷き、私は平井さんの話を聞いた。
「まず、あのお店の入り口付近にあるカバンがあるじゃない?」
「…うん…」
そのカバンは、ピンク色で肩からかけるカバンだった。
「その3つ横にある、ベージュにフリルがついてるやつあるでしょ?」
「あ…うん」
「それ…取ってきて」
ゆっくりと唾を飲み込む。
「じゃ、いってらっしゃーい」
ドンと肩を押されて、脅されるがまま、
私はそのお店へとはいって行った。
店に入ると、可愛い店内とそれに似合う曲。
そして、「いらっしゃいませー」と
若い女の人の声が店内に響く。
「……」
ゆっくりとそのカバンを手に取る。
あたりをキョロキョロと確認して、駅の方を見ると、
そこに平井さんの姿はなかった。
「平井さん…」
少し探すと、ちょうど店の入り口付近に平井さんの姿があった。
早くとせかして手まねきする平井さん。
「………」
どうしよう。
取るの。
取るの?
お金も払ってないのに。
無断で。
どうするの。
見つかったらどうなるの。
捕まる。
親に連絡される。
学校にバレる。
私は…
どうしたらいいの。
手に力が入り、冷や汗がダクダクと
出ているのが自身でも分かる。
「……」
大丈夫。
大丈夫。
見つからない。
でも、
これは犯罪。
許されない。
ただ事で…
すまされない。
でもそうしないと、明日からも…。
「…っ」
誰にも見られないように、
ゆっくりゆっくりと制服のブレザーの下に入れる。
「……」
そうして、誰にも見つかっていないのを確認すると、
店内を静かに出て行った。
「ナイスッ!雪帆ぉ」
「おつかれさーん」
そうして、この日はこれで終わり、
私はホッとして家に帰った。
でも、まだこれは、
"地獄"の始まりにしか過ぎなかった。
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