社会問題小説・評論板

Re: 私が存在する理由 ( No.33 )
日時: 2011/12/15 19:31
名前: 不登校少女I. (ID: b1TZiT7s)



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次の日、重たい体を無理矢理起こして、
私は準備に取り掛かる。
「…万引き…しちゃった……」
私……。
自身の手を見る。
「どうしよう…」
ばれたら…。
顔が引きつるのが分かる。

「大丈夫。見つからないよ」

用意を済まし学校へ向かうと、
いつもよりざわついている校内。
「…??」
何も知らない私は教室へ足を踏み入れる。
すると、
「あっ犯罪者が来たよ〜」
「万引きとかサイッテー」
「ありえねぇよ。もうウチらに関わんな」
…どういう…こと…?

黒板に目をやると、
一面に"中山雪帆は万引き犯"と大きく記されている。
「…平井、さん……」
「話かけんなやばーか」
……どうして……。
「…して……」
「ああ?んだよ?なんか文句—「ねぇ……どうして?!」
手に力が入る。
「…はぁ?」
とぼけたように返す平井さん。
それでも私は怯まずに言い返す。

「どうして、簡単に人を裏切れるの!?私にはわからないよ!!」
「うざいんだよ!!お前が!」
「それは平井さんたちの勝手だよ!!私を嫌いでも別にいい!!
でもそうやって…簡単に人の気持ち踏みにじったりできるのは…
どうしてなのよぉっ!!!!!」
真正面を向くと、平井さんが相当怒った様子で片手を振りあげる。

「っ!!!」
きつく目を瞑り、体に力が入る。
—パァンッ

教室に乾いた音が鳴り響く。
「……?」
痛く…ない?
「…」
恐る恐る目を開けると、目に入ってきたのは、
堂々とした背中。
そう、篠崎さんだった。

「へー。あんたもやればできるんじゃん」
ニッと口角をあげた篠崎さんの唇は、
先ほど叩かれたせいか、切れて血が出ていた。
そして、その血を左手でふきとると、
「平井、私を口止めしなかったのが大きなミスだったんだよ」
「っ…—
「自分がやったことを認めろ。平井。お前は…
「るさい…うるさい…黙れ黙れ!!!」
取り乱す平井さんを複数の女子たちが止める。

「行くよ、中山」
私の手首を握ると、篠崎さんは勢いよく教室を飛び出した。
「ど…どこ…に…行くんですか…?」
脅える私のおでこにデコピンを入れる篠崎さん。
「イタッ…」
「相変わらず敬語なんだな。タメでしゃべりな」
篠崎さんはやけに命令口調。
それが何でなのかは分からない。

「えっ…っと……どこ…行く…の?」
「屋上だよ」
「えっ!?…い、いいんですか?」
「タメ使って!それと、屋上いいのいいの!ほら早く」
そうして走って屋上に着くと、
「よくできたね。中山」
と笑顔で振り返って言う篠崎さん。
それに私は「え?」と聞き返したしまった。

「ホントはもっと前から中山のこと気になってたんだよ。
ってゆうか気にくわなかった?っていうのか?弱弱しいし、
言い返さないし…腹立ってきちゃって…」
「篠崎…さん?」
「ごめん。本当は守るつもりでいたんだよ。
私はこう見えてもクラスの委員だし、ずっと1人でいる中山見てると…
さ……」
あはははと笑いながら言う篠崎さん。
そんな言葉を聞いて、目からボロボロと涙があふれた。

「え!?何で泣くんだよ!」
「違う…違うの…。嬉しくて…」
「…雪帆……」
「…うっ…ひっく…」
声を上げて泣く私を、温かい手でなでる篠崎さん。

「これから私たち、友達だぞ」
そう言うと、ポケットの中から
「はい、これ」
と不器用に縫われた手作りのぬいぐるみを渡された。
「何…?これ……」
「クマのぬいぐるみ…」
それが何ともクマに見えなくて、
私は声を上げて笑ってしまった。


END