社会問題小説・評論板
- Re: 暗闇の世界で、翼は溶けていった。 ( No.16 )
- 日時: 2012/02/26 10:02
- 名前: 来夏 ◆HpxJ7yQkz. (ID: mHEGDCBg)
episode 古川流星
かったるいHRが終わった頃、俺は教室へ戻る。桃沢が俺に気づいて、手を挙げた。
あー、またか。この合図。
そう思ってた時、ふと大和が居ないことに気づいた。近くに居た戸川に聞いてみた。
頬がいつも腫れていて、湿布をしている事が多い奴だった。
「戸川。大和知らねぇか?」
「若林なら、ホームルームが終わった時に出て行ったんだけど」
「サンキュ」
とすると、多分屋上か。俺はまた教室から出て行った。戸川が俺を見て、ポツリと呟いた一言には気づかなかった。
「……大丈夫かな、古川……」
***
「———また、行くから。学校、来い」
屋上のドアを開くと、大和は電話をしていた。てか学校、携帯禁止なのにまた持ってきてんじゃねーか。
でもこの電話、多分不登校のあいつにかけてるんだろうな。
大和は、電話を切り終わると俺に気が付いた。大和はこっちへ近寄って来る。
頭に赤いバンダナを巻いて、明らかに染めている赤茶の髪。それが、大和だった。
「椎名に電話してたのか? それ、四之宮にバレたら…」
「プリント届けるだけの関係って言ってるから、大丈夫だ。それと、あいつが来れないの、四之宮が居るからだぜ?」
“椎名杏子”一年の時に、四之宮に虐められた。理由は知らないけど。でも、そのせいであいつは不登校になった。四之宮がクラスに居るせいもあるらしい。大和はそう言ってる。
「四之宮を気にせず、なんて無理か?」
「無理。杏子にとっちゃ、あいつはトラウマだからな」
「そんなにトラウマな虐めを、されたのか?」
「まぁ聞いたけど、今はそんなに過激じゃねーからな……」
そう言いながら、大和はポツリと呟いた。
「脱がされたりして、それを撮られたらしいからな。周りは敵だらけ。虐めのターゲットにされたのは、くじ引きとかって聞いた」
「……榎本にまだ理由があるから、マシか?」
「まぁな。杏子、耐えただろうな。学校に来いって言ったけど、無理だろーな」
そう言いながら、大和は赤の携帯を見ていた。本当に赤色が好きだから、小物がほとんど赤なのだ。
「……椎名から連絡待ちか? てか、お前と椎名の関係、俺以外に知ってる奴居るのか?」
「匠と一馬だけだな。あいつ等は、バラさないから。二人、椎名が虐められてた事知らなかったらしい」
意外だな、あいつ等が知らないの。でも、あいつ等もクラスが違ったから当然か。
「……大和は、何で椎名に来て欲しいんだよ。今来ても、あいつには居場所が無いんだぜ?」
「ホントは、あいつ学校行きたいんだってよ。怖いけど、勉強したいんだって。……それに、来たら四之宮が驚きそうでさ」
そう言いながら、大和はニヤッと笑う。虐めには否定的じゃないけど、コイツの場合は四之宮の表情が気になるらしい。
「それと、今の事話したんだよ。工藤と榎本が虐めのターゲットになった事も」
「……話して倒れないのかよ、椎名は」
「いや。アイツ、言ったぜ? “わたし以外のターゲット、また増えたんだね。証拠とか残しても、四之宮は破滅しない”って」
「……そうだな」
あいつは、証拠を残しても破滅しない。恐らく、周りが変わらない限り。
「“傍観者は、きっと居る。その人達で繋がれば、もしかしたら”って言ってた」
傍観者って、俺等以外の奴等か。でも、今は確実に無理だ。
四之宮や日村、桃沢は完全に調子に乗っている。何か全員狂った感じしかしない。
また、ターゲットが増えそうで、俺は呆れた。