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　episode　千原南


「……？」


　いったい何が起きたんだろう。
　D組が、騒がしい。いつもみたいに保健室で避難してたんだけど。

　
　教室のドアを開けてみると、泣いている女子や悲しそうにしている男子が居た。
　だけど机や椅子が、あちこちに散らばっている。教室の真ん中には、榎本と古川達が居る。


「濱田。何が起きたの？」
「あ……そ、それが、ゲホッゲホッ！」


　入口の近くに居た濱田に聞いてみた。けど今日は調子が悪かったみたい。アタシもそれに気づかなかったから、悪いかもしれない。


「工藤が殴りかかって、四之宮達と一緒に職員室に連行された。それだけだ」


　濱田の隣に立っていた多川は、そんな事を言った。


　——雛が、殴りかかった？
　嘘でしょ？　何があったの？


「なんで、そんな事……」
「四之宮達の言葉に、キレて殴った。でもあれは、四之宮達の方が悪いだろうな」


　多川の言葉を聞いて思ったのは、いつも通り榎本に悪口を言いまくってた、という事実だった。
　でもこのままじゃ……。

「……」


　ガタガタとアタシの身体は震えていた。このままじゃ、雛が停学になる。
　絶対紘歌なら、雛を追い込む。


「榎本さん？」
「あたしのせいだから……雛の所に、行ってくる」


　椎名が榎本に話しかけたのが見えたし、聞こえた。榎本はそう返して、教室から出ていった。そのあとを若林と椎名がついていく。



「……あいつ等、説得すんの？」



　あたしは、そんな事を呟いた。



　——説得なんて、無理だと思うんだけど。