PR
社会問題小説・評論板
- Re: 暗闇の世界で、翼は溶けていった。 ※少し修正中。 ( No.84 )
- 日時: 2013/07/24 18:04
- 名前: 来夏 ◆2ZBHn0dH/Y (ID: pHBCaraS)
episode 榎本琳華
「千原さん……えっと桃沢さん……」
「アタシ達、話してくるから。……榎本に申し訳ないし。それに紘歌達は、喋らないかもだし、さ」
桃沢さんは気まずそうにそっぽを向いている。
彼女はぽつりと呟いた。
「……あんただって悪いけどさ。でも、思った事言っていい? あんたが言わなきゃ、紘歌はずっと———」
「わたしの様に、被害者が増え続けるって事を言いたいの?」
黙っていた杏子ちゃんがそう口にした。
桃沢さんは、そんな事を言いたかったのかな。分からないけど。
「それだよ。でも、お前も悪いっちゃ悪いと思う」
「……分かってるよ。けど、それでいじめるのは、どうかとは思う」
「葵……でも、謝った方がいいって。アタシは、本当はもう……したくなかったよ」
そう言う千原さんを見て、桃沢さんは頭を掻きながら出口を見ていた。
「……その前に、南。先生達のとこだ」
「あ、うん」
「佐倉達は、巻き込んだだけだしいいんだ。てか若林達もだろーが」
そう言いながら桃沢さんは、スタスタと歩いていく。足取りはしっかりとしていた。
千原さんや古川君、若林君も後をついていく。
「……杏子。ごめん、後でな」
「うん……」
不安そうにする杏子ちゃんを、わたしは見ていた。
わたしも、不安だった。
どうなるか分からないけど———何かあったら、言おうと思った。
PR