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　episode　若林大和


「———若林。お前は、途中から抜けたんだな？」
「抜けたよ。杏子が学校に来れないし、抜けた。あと榎本達にはちゃんと謝ったよ」


　今日の授業は、ほぼ自習になった。
　でも俺や流星、匠、一馬は先生達に事情を聞かれる事になった。
　榎本や椎名も、四之宮達も。
　だからほかの奴らは自習になった。

　俺はというと、三階にある空き教室で国語担当の“内川”に聞かれていた。
　俺はまだ良いが、隣に居る（と思う）日村と体育担当の怒鳴り声が凄い。
　

「……あとは言いたい事はないのか？」
「ねぇよ。あんた等に何言ったって無駄だろ。杏子のいじめにもシカトしてるんだからよ」


　そう言い返して、ちっと舌打ちをしておいた。
　その一言に、内川が黙った。
　

「……でも……」
「でもじゃねぇよ。俺だっていじめたのは悪いとは思う。けど、あんた達が杏子のいじめを認めてりゃ、こんなになるまではならなかったんじゃねぇのかよ」


　俺はもう言いまくった。
　榎本達だってこう思っただろうし。
　杏子の事を、俺はプリントを渡す係になるまでは知らなかった。
　あいつが居なきゃ、俺はずっといじめてた。
　
　いじめがあるのは当然だと思ってるけど、杏子達と関わって分かった。
　あってもしちゃいけないもんだと。


「……人のせいにしてはいけないと思うが、な。隠ぺいだ。四之宮の家は———モンスターペアレントに近い。だから…」
「杏子に謝れよ。とにかく、んなもん理由にならねぇよ！」


　そう言って俺は立ち上がって、座っていた椅子を蹴った。
　そして俺は出て行った。
　内川が呼んでいたが、俺はシカトして屋上へ向かった。


　***


「———誰もいねぇ、か」

　
　開けたドアを乱暴にしめて、脇に座り込んだ。
　まだ、話を聞かれてるんだろうな。
　俺は勝手に出てきたけど。


「———榎本と杏子、工藤には謝れよな……」


　俺は別にいいとしても、さ。
　今思えば、工藤が止めなきゃ榎本は死んでたかもな……。
　そう思ったら、寒気がした。


「……榎本、俺と千原と流星は許してたよな……」


　昨日の帰り際、榎本は俺達に言っていた。


『わたしだって、悪いから。だから、いいよ』
『いや、俺等が悪いんだっつーの』
『殴られた事とかは許せないけど、今はこうやって味方になってるから』


　そんな事を言ってたけど、周りからしたら許されない事だと、俺は思うけど。


「……大丈夫だろーな……」


　不安で、俺はたまらなかった。