社会問題小説・評論板

Re: Re:愛してる ( No.127 )
日時: 2013/06/09 21:58
名前: おかゆ (ID: U94d6Dmr)





「・・・あの子に会って来い、市川」


——・・全身が沸騰するように熱かった。


同時に、自分が何をやっているのかわからなくなった。

「伊藤っっ!!」

かなり大きな声で叫んだ気がする。

そして手を振り上げた。



「———市川、」

「っっ・・!!」


そして、その手は行き場を失ってトンッ・・と伊藤の肩辺りに触れただけだった。


「お前らは十分頑張ってると思うけどな」

「・・・何も、知らないくせに」

「あぁ、知らない。お前ら以上にお前らのことを知らない。けど、ほかの人たちよりは知ってるつもりだ」

「・・・・・・、」

「もう強がらなくていいんじゃね?」

「・・・・ダメ、だ」


ダメだ、ダメなんだ。


「伊藤が思っているほど・・そんな簡単なことじゃないんだ・・・」


やめて。これ以上——・・



「でもお前が思っているほど難しくないと思う」



・・・・・・・・。




「—文化祭って言うのにこんなとこで説教かよ・・」

「かもな」


伊藤は優しく笑う。

「それに・・会って来いって言ったって・・いないじゃん・・」

「いるよ」

「は?」

自分の耳を疑いそうになった。今、こいつ、なんて言った?


「実は俺が招待した」

「はっ!?」

今度こそ、自分の耳を疑った。


「お前絶対招待しないと思ってわざわざあの子の高校まで行って——」


ここから先は覚えてなかった。


なぜだか笑いがこみ上げてきて。


なぜだか自慢げにはなすこいつを見ていたら



怒りとか、全部飛んで行っちゃって。




まったく、なんてことをしてくれたんだ。




本当はすごく会いたかったのに。

それを無理やり押し込めて我慢して。




「・・・・・・あぁ、馬鹿みたいね」

「ん?なんか言ったか?」

「なんでもない——・・ありがとう」

「おう!!・・・・って、そうだ!もう時間がないんだよ・・あと10分で待ち合わせ時間だ・・っと」



彼は理紗を招待し、時間になったらあの資料室に来るように頼んだらしい。


そしてその時間までに私を見つけ出し、説得させ、理沙のいる資料室に連れて行くこと。


一か八かの賭けだったとか。


それを聞いてまた笑った。


「もし私が行かなかったらどうしたのよ」

「そこらへんは考えてなかった」



そしてとっとと行って来い、と背中を押す。


「・・・うん」









さぁ、速く。




急いであの子のいる場所へ。


自分から言い出したけじめなんてもう関係ないわ。



伊藤が私や理沙のためにやってくれたこと、




精一杯の感謝と行動で恩返しを。









深呼吸をして扉を開ける。











「———・・瑠璃?」





——・・あぁ、懐かしい声。



「・・・理紗、」






———そこにいたのはあの時と変わらない—・・、