社会問題小説・評論板

Re: Re:愛してる ( No.128 )
日時: 2013/06/15 00:29
名前: おかゆ (ID: pH/JvMbe)



「・・・・・理紗」

その声は驚くほど優しくて。


「会いたかった」

「・・私もだよ」

「伊藤に言われた?」

「・・・・・・うん」

理紗は一瞬だけ暗い表情をしたがすぐに顔を上げて、


「あっ、でもね、伊藤君は悪くないよっ!その・・伊藤君は、私や・・瑠璃のためにと思って・・」

「そーゆーのがおせっかいって言うかありがた迷惑ってのがわかってないんだよなあいつは・・・」

「だからっ・・・・・伊藤君は悪くないの・・・私も・・瑠璃に、会いたいって・・思っちゃった、から・・」


そして、理紗は。



「——約束、やぶっちゃった」




そう、笑うのだ。


あまりにも綺麗に笑うもんだから。


思わず泣きそうになって。






「——伊藤君にお礼を言わなきゃね」

「・・・・・あいつに、お礼?」

「そ。おせっかいで、ありがた迷惑・・・それでも、私は瑠璃にあえて嬉しいの。会いたかったの。私は彼にお礼を言う義務があるわ」


そして小さく私にもお礼を言った。



「・・・?」

「私のためにこんなに頑張ってくれて」

「まだ言うか・・私はそんな理紗にお礼を言ってもらえる人間じゃ、」

「私がいいたいんだって・・」

「・・・・・うん・・」




それからは他愛もない話をした。

最近の出来事、嬉しかったこと、楽しかったこと、


一日じゃとても足りない時間を私たちはなんとか、必死で埋めようとしていた。


次はいつ会えるんだろう、


そんなことを考えながら、まるで、あのときに——・・中学に戻ったときのようだった。



嗚呼、




今、私たちは欠けていた青春を必死で取り戻そうとしてるのね。







そんなことを考えながら。





文化祭という祭りに便乗して、流れに身を任せながら、一分一秒でも長く、





理紗と話がしたかった。






『本日はお越し頂き、ありがとうございました。まもなく文化祭は終了しますので、つきましては——』



「・・・・・もう、帰らなきゃね」

「あ、本当だ。もうそんな時間か」

「ふふ・・伊藤君には本当に感謝してる」

「また伊藤ばっかり」

「妬けた?」

「・・・・・まさか」



そしてゆっくりと理紗が立ち上がる。

まるでこの時間を惜しむかのように。



「じゃあね」

「・・・・うん」


「次はいつだろうね」

「わかんないよ」





そしてゆっくり、ゆっくりと足を進めて。そして。






「—————」



ゆっくりと理紗がいった言葉は放送によってかき消されてしまって。



でも、確かにその言葉は聞こえたんだ。





「・・・・・うん、楽しみ」






今はただ、それだけ言えば十分だろう。












(——もうじき終了の合図、なんて)
(なくなってしまえばよかったのにね)