社会問題小説・評論板

Re: Re:愛してる ( No.52 )
日時: 2012/04/22 01:06
名前: おかゆ (ID: 3T8mb002)



それは。





遠い遠い、昔の話。


昔といっても俺が中学生の頃の話。


俺には『親友』がいた。

 *    *    *

「・・・いた、愁。もうじき休み時間終わっちゃうよ?」
「えー、あー、もうそんな時間か・・」
「また演劇やってたのか?」
「まぁ、そんなとこ」


俺には親友がいた。

小嶋愁。

俺よりちょっと背の低い、優しくて素直な、そして演劇が大好きな親友。


「ねぇ、翔?ちょっとここ2人いなきゃ無理な場面があるんだけど・・練習に付き合ってくれない?」


愁は演劇部に入っていた。

そしてよく台本を読んでいて、練習。俺もそのたびに聞いて、練習に付き合わされた。

でもそれは意外に嫌でもなく。



「どこだよ」
「ここ。5行目の主人公が言う台詞から」



そして役に入ると愁は別人になる。


ある時は異国の王子様。
ある時は心に傷を負った少年。
ある時は最強の不良。
ある時は森に住んでる不思議な魔法使い。


俺が恥ずかしいと思うような役でもコイツは何のためらいもなく、簡単に、平気でこなしてしまうのだ。


俺はそんな愁が面白くて楽しくて



たまらなくかっこよかった。


「・・・俺を裏切ったなっ!!」
「お前が勝手にだまされただけだ」


今回愁が演じるのは主人公に近い存在の役らしい。
主人公ではないものの、愁はすごく喜んでいた。

「また翔演技うまくなってる・・俺は停滞期かなぁ」
「お前はいつ見てもうまいよ」




そんなやりとりが楽しくて、俺はずっとこれが続けばいいと思った。