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社会問題小説・評論板
- Re: Re:愛してる ( No.61 )
- 日時: 2012/05/14 21:55
- 名前: おかゆ (ID: I4ogAiKW)
「・・・いと・・」
ふと、市川の声で我に返る。
「・・・ごめんね」
もう一度小さく声に出した。
「・・・も・・う、私は、だいじょ、ぶ、だから」
大丈夫じゃないだろうと心の中で思ってても、市川があまりにも綺麗に笑うから俺は『そっか』とまた小さく笑うしかなかった。
「ありがとう、理紗のことを聞いてくれて。ありがとう、さっきの麗華のこと理由も聞かないでただそばにいてくれて」
やっと本当に落ち着いてきた市川は俺の手を軽く握った。
「・・・・でもね、伊藤。もう一つだけ私のお願いを聞いて」
市川が真剣な顔をしていったから俺は少し驚いた。
「——今日はもう帰って?」
「・・・・・え?」
「しばらく一人でいたいの」
自嘲するような笑み。
まるでまた、自分を責めてるようで。
『もう』とっくの昔に友達との接し方を忘れた俺は、
市川がどんな気持ちなのか、このときになんて言葉をかければいいのかわかんなくて。
「・・・・わかった」
考えた結果やっと出てきた言葉はこんなんで。
「・・何泣きそうになってんのよ」
「大丈夫」
「もう、どこも切ったりしないから」
なんて。
気を使うどころか逆に俺が気を使われちゃって。
「・・・・何かあったらメールしろよ。電話でもなんでもいい。来て欲しいならすぐに来るから」
不器用な俺が出したのはそんな言葉。
一瞬驚いた顔をしたけど彼女はやわらかく笑って
「わかった」
そう言ったんだ。
「・・・・じゃぁ」
「うん、」
扉を閉める。
いつか、
いつか彼女に俺の過去を話そうと。
廊下を歩きながら思った。
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