社会問題小説・評論板

Re: Re:愛してる ( No.83 )
日時: 2012/09/09 01:16
名前: おかゆ (ID: fxhCNxuy)




「なんで、ごめんなんて言うのよ・・・っ!!」

理紗は怒ったような、困ったような顔をしていた。

「・・・やっと離れたと思ったらまだ麗華からつかまってたんだ・・・それは全部私のせいだと思う」

「違うって言ってるじゃん・・・怒るよ」
「怒ったっていいよ、それで理紗がすむのなら殴るなり、蹴るなり、好きにしていい」
「・・・やめてよ、私そんなことしたくない」
「・・・・・・」


ふと、時計をみた。


もうそろそろ六時になるころ。


「・・・・時間がたつのは早いなぁ」
「瑠璃っ!!」
「本当に・・・・早いなぁ・・・」
「お願い聞いて瑠璃・・」
「・・・私思うんだよね・・このままだと・・理紗が駄目になっちゃう」
「そんなことっ・・」





「・・・・・・絶交、しようか」


「————っ!?」


最後に、ごめん。ごめんね、理紗。

私は最後までわがままで自分勝手だ。


「何言ってるの・・ばっ・・・馬鹿じゃないのっ!?ねぇ、瑠璃!!」

「・・・自分でも馬鹿だとは思ってる・・でも、もう理紗があいつのせいでつらい思いをしてるなんて聞くだけで嫌なんだよ」

「だからって絶交なんてないでしょ!?」

「・・・これはひとつのけじめとして・・・大丈夫だよ、理紗にはもうたくさんの友達がいるでしょ?私がいなくても大丈夫」

「ねぇ・・・本当に自分勝手なこと言ってるってわかってる?」

「私たちが離れたって知ったらもう麗華は理紗には近づかないと思うよ」

「そんなわけないと思う」

「私はね・・・理紗が思っている以上に理紗に依存してた」

「何も絶交までしなくてもいいじゃん」

「ううん・・・言ったでしょ・・これはお互いのけじめ、として」

「・・・・・最低」




理紗。


「・・・こんな私と友達に・・・親友になってくれてありがとう」



理紗。


「ありがとう」


心をこめて。



「・・・・・これからも親友でいて、なんて本当に図々しいけど」



届けばいい。



「親友でいてくれたら嬉しい」



嗚呼、泣くな理紗。



「軽蔑してくれてもかまわないし、嫌いになってもかまわない。それだけ私もひどいことをした」



頼むから泣かないで。



「でも私は、死ぬまで理紗のことを嫌いになんてならない」



「・・・親友、って言ったのに絶交?本当におかしいよ」


「私もおかしいと思ってる・・絶交じゃないね・・・じゃぁこれは・・さよなら、か」

「え?」

「しばらくの間、さようなら。これならいいのかな」

「・・・・・」


あぁ、もう理紗はうすうす気づいてるのかもしれない。


『しばらく』とか『今度』なんて言葉はもうないってこと。


もしかしたらもう私たちは会わなくなるのかもしれないってことを。



「・・・・私は待ってるからね」
「ん?」
「いつかお互いが本当に幸せになったとき、また二人で遊ぼうね」
「・・・・・うん」
「絶対よ。私は絶交なんて認めない」
「・・・・そろそろ帰ろうか。お母さんがきっと心配してる。最近は不審者とかがいて怖いらしいよ?」

理紗が何か言いかけたところでやめた。


——・・また、はぐらかしたかな、なんて。





そして私たちはそれぞれの道へ歩いていった。



ふと、振り返ってみる。



理紗も振り返った。


『バイバイ』

軽く手を振る。

そして少し大きめの声で理紗は言う。


「その、いつかが来るといいね、瑠璃」


泣くな。本当に。


「また、一緒に遊びたい」



泣くな、理紗。


「・・・・・もう、帰りなよ」


泣くな・・・・

「あのねっ!瑠璃!!」


泣くな・・・・・、





「絶交なんてしないよ!!!だって私たちは親友なんだもん!!」
「———っ、」









泣くな、私。





————
————————
—————————————



「・・・・・遅かったな」
「どこから見てたの?」
「ほぼ最初から」
「へぇ」



しばらく歩いたところで伊藤が待っていた。





「なんつーかさぁ」



伊藤が私の頭を軽くたたく。





「お前、かっこよすぎんだろ」





また、私の涙腺が緩む。



「でも、驚くほど不器用だったな」


そして今度は優しく頭をなでた。



「もう、会わないつもりだったんだろ?」
「・・・・、」
「本当に馬鹿だ」




『俺にはまねできねぇよ』なんて軽く笑いながら。



「お前、笑えてねぇよ?言っとくけど」
「・・・うる、さい」
「あの子の前では必死で強がってたっぽいけど、お前、泣いてるからな今」
「・・・・っ、」











「お疲れ様」






「———っっ・・・」






(それが、最後にあの子に見せた精一杯の強がり)