社会問題小説・評論板
- Re: Re:愛してる ( No.84 )
- 日時: 2012/09/09 21:45
- 名前: おかゆ (ID: CmU3lREQ)
「(あーあ、)」
薄暗くなった帰り道を二人で歩いた。
「(・・どこまでついてきてくれるんだろう)」
さっきからずっと無言で一緒に歩いてくれてる。
もうだいぶ乾ききった目元を軽く触りながらゆっくりと伊藤に尋ねた。
「・・・・・伊藤、どこまでついてきてくれる?」
「ん?・・・あー、どこまでがいい?」
「もういいよ。私は大丈夫だから」
「って言ってもなー、お前そういう時って半分嘘だもん」
「本当だって」
「それに俺ら途中まで道一緒じゃん」
「あ・・・・」
そういえば。
いろいろありすぎて気がつかなかった。
「ほら」
伊藤が軽く笑う。
「そんなことも忘れるくらいまだ、動揺してんだろ?」
「・・・・・・、」
正直、最近彼に助けてもらってばかりだと思う。
私だって、恩返しがしたいのに肝心の彼のことについては何も知らない。
それは彼なりの優しさなのだろうかそれとも——・・
「・・・・・そうだね」
私は伊藤にそう短く返事をするとさっきまで頭の半分を占めていた考えをやめることにした。
「・・・だって理紗が転校するって聞いたときもう一生会わないのかなぁなんて思ったりしたんだもん・・・なのに、こんな、よりによって停学中にあっちゃってさ。数日で半分が解決しちゃうような・・そんな、こと・・」
「考えてなかった?」
数秒早く伊藤が言った。
「・・・うん。だって・・・数日だよ?私が・・ううん、私と理紗が何日も何ヶ月も考えて悩んでいたことがあっというまに・・・・もう、なんであんなに考えていたんだか分からなくなる・・・」
何も進まないで考え続けるくらいだったら。
「——傷つけても、進むべきだったのかなぁ・・・」
本当に私達がしたことは正しかったのか。
今思えばそれはあいまいになって消えていく。
「・・・思ったんだけどさぁ」
ふと、伊藤が声を出す。
「お前らが考えてきた時間は無駄になんてなってなかったんじゃないか?—・・って、思うんだけど・・」
「え?」
「数日で片付いたって思ってるけどそれは間違いで、その考えてる時間がたくさんあったからこそ、数日で・・いや、一日で片付いたんじゃないのか?」
「・・・・・・、そうかも」
「だろ?」
『やっと笑顔になったな』と笑われ、改めて伊藤はすごいと思った。
「まぁこんな俺の話でも役に立ててよかったわ」
そういった伊藤はやっぱりすごく綺麗に笑うのだ。
すごく・・・・・綺麗に・・・・・・、
(その笑顔を見るたびに私は何度救われて、)
(何度、泣きそうになったことだろう)