社会問題小説・評論板

Re: Re:愛してる ( No.93 )
日時: 2012/10/19 23:56
名前: おかゆ (ID: FbaZhPAX)


「だからさ!!市川!!俺らも名前で呼んでみようぜ!!」
「なんで、今のままでもいいじゃない」
「俺、仲良くなりたいもん」
「・・・・・、」

どうして彼はこうなんのためらいもなく恥ずかしいセリフを言えるんだろう。

「でもさ、今話してたけど早速言えてないじゃん。名前」
「あ」

伊藤はしまったというような顔をしてしばらく考え込んだ。


「る」
「る?」
「・・・・・る、る・・・・・・・る・・」


どうやら彼は今私の名前を呼ぼうとがんばっているらしい。

「・・・・っ、る、」
「さっきからるしか言えてないよ」

私が軽く笑うと彼は顔を赤くしながら


「うるせーよ!!」

と言った。

「こっ・・こういうのは改めてやるとその・・・恥ずかしい、もの・・なんだよ・・」

さっき恥ずかしいセリフを言った彼はどこへやら、今目の前にいるのはたかが一人の女子の名前を呼べない彼がいた。


それがなんだかおかしくて。


「・・・・な、に、笑ってんだよ!!」
「いやだって・・たかが名前呼ぶだけじゃん」
「なんか意識して呼ぶと恥ずくね?」
「そう?」
「絶対俺だけじゃないって!!一回お前も呼んでみろよ!!俺の名前を!!」





「翔」





なんの迷いも、ためらいもなく私は彼の名前を呼んだ。


すると彼は拍子抜けといった感じで私をまじまじと見た。



「翔、」


私はもう一度名前を呼ぶ。

「お・・・おう・・・」
「なんで照れてんの」

私が軽く笑うと伊藤は「やっぱ市川すげぇな」とブツブツ言いながらまたひたすら『る』といっていく。



「私もう帰っていいかな?」
「え!?え、ちょっと!!市川!?」

俺も、といって伊藤はかばんを持って私の隣に来た。

「名前はいいの?」
「明日がんばるわ」



伊藤が少し可愛いと思えた今日この頃。