社会問題小説・評論板

Re: お嬢様に虐められて虐めましょう。【お礼小説】 ( No.118 )
日時: 2012/12/09 22:19
名前: 黒猫ミシェル (ID: EdfQYbxF)

雅な装飾が施された扉が開くと見えるのは、両側にずらりと並んだ召使い達。
この召使いの数の多さは、お父様の権力を物語っている。

『お帰りなさいませ、お嬢様』

いつもの笑顔に精錬されたお辞儀。

『ご主人様がお待ちでございます』

毎日毎日聞くこの言葉。
好い加減頭がおかしくなりそう。

『お嬢様』『お嬢様』『お嬢様』

作られた笑顔に、偽りの忠誠心。
その言葉の裏には何が潜んでいるのかしら。
いつ裏切られるか分かった物じゃないわ。
そう、かつてのジャンヌ・ダルクのように。

「麻衣」

わたくしの召使い。

「麻衣、来なさい」

お馬鹿で間抜けなわたくしの召使い。

「麻衣」

「お、お呼びでございますか…?」

「遅くってよ。わたくしが呼んだらすぐに来るのが常識ですわ」

「もっ、申し訳ありません!」

おどおどとわたくしを上目遣いに見つめる瞳。
馬鹿正直な麻衣。
わたくしをどう思っているか全て読み取れる表情。

「…」

「何をボケっとしているのかしら?靴を脱がして頂戴」

「え…」

「わたくし、疲れてしまったの。…早く」

「畏まりました…」

麻衣の手がわたくしの革靴に触れた瞬間、わたくしはその手を踏んづけた。

「…痛!!」

「わたくしを待たせた罰ですわ」

「もうしわけ、っありません…ッ」

「さ、わたくしの部屋へ行きますわよ」

「…畏まりました」

召使い達は何も言わない。
黙って見つめているだけ。

「あなた達、お父様に7:00に伺うと伝えといて頂戴」

『畏まりました』

一斉に顔が見えなくなった。
わたくしが人生で一番聞く事になる言葉。
それはもしかしたら…

『畏まりました』

…なのでしょうね。