社会問題小説・評論板
- Re: お嬢様に虐められて虐めましょう。【お礼小説】 ( No.122 )
- 日時: 2012/12/17 15:21
- 名前: 黒猫ミシェル (ID: EdfQYbxF)
そう、あれは私が幼かった時のこと。
「うっ、ひっく…」
私は泣いていた。
心ない言葉を投げつけられて。
「ブサイク!!」
「キモー」
「こっちみんなよ!!」
子供は時に残酷だと思う。
思ったことを口にする。
相手の気持ちを考えようともしない。
「お前、しつじの子どもだろ?」
「ごしゅじん様って言えよ」
「おれたちの言うこと、何でもきくんだぞ」
「ひっう、ぅう…」
相手は数人の男の子。
到底私が敵うはずもなかった。
例え勝てる見込みがあっても、私はぶつ事ができない。
何故なら、その子達は名門家の子息だから。
「よぉ、まい」
「あそぼうぜー」
「どれいごっごだぞ」
男の子達は飽きずに毎日毎日私の所へきた。
私という新しいオモチャで遊んで楽しんでいた。
「あなた達、なにをしているの?」
私が奴隷役で、石を投げられていた時。
そんな時、声が聞こえた。
綺麗な声だったけど、泣いた後の様な、掠れた声だった。
「だれだよおまえ!!」
「うざーい」
「なかすぞ!!」
「その子はわたくしの、めいどなの。いじめないで」
少し赤く腫れた目を、それでも隠そうとしないで、喋っていた。
とても堂々としているなと思った。
着ていたドレスは所々汚れていたけれど。
「めいど?ふざけてんじゃねーよ」
「あははははっ」
「うけるー!!」
「ふざけてないわ。わたくしのめいどなの。麻衣は」
「めい、ど?」
父さんが良く口にしていた言葉だった。
お前は将来月城家に仕えるメイドになるのだと。
一人娘のお嬢様に仕えるんだと、嬉しそうに目を細めていた。
でもその時の私には難しい話で、良く意味を理解していなかったけど。
「しってんの?めいどって、金持ちしかむりなんだぜ?」
「そうだよ!!お前、どこの家だよ?」
「おれは草野部だぜ?」
「おまえ、どうぜたいしたいえじゃねーだろ」
「だよなー。あんなかっこ、はずかしー」
年上の男の子に何をいわれても、その子は泣かなかった。
私もとっくに涙が引っ込んでいて、ただハラハラと見守っていた。
どうか、あの子が怪我をしませんように、と。
「わたくし、つきじょう麗華。つきじょうあさひの、娘よ」
「はっ!?」
「な…う、うそだろ…」
「月城家…?」
心の中で、父さんが仕えている家の名前だなって、思った。
男の子達が何故あんなに驚いているか、分からなかったけど。
「お願いだから、その子、いじめないで」
「ごめんなさい!!」
「なにもいわないでッ」
「麗華様、ゆるしてくだぇ!!」
みんな、土下座していた。
さっきまで、草野部家を自慢していた男の子も。
みんな、顔を真っ青にして土下座していた。
頭を、地面に擦り付けて。
あんなにプライドが高い子達が。
「ゆるして、あげるわよ。麻衣を、いじめない?」
「もちっろんです!!」
「は、はい!!なあ!?」
「え、あ、はいっ!!!」
逃げて行く男の子達。
私に石を投げ付けながら帰って行かなかった。
私に悪口を言いながら帰って行かなかった。
こんなこと、始めだった。
「大丈夫?」
「は…い」
働かない頭で、そう返事をした。
私を労わってくれる目に、また涙が出そうだった。
「わたくし、麗華。お友達になりましょう?」
「はい…」
そういって微笑んだ女の子。
麗華様は、私の始めてのお友達だった。