社会問題小説・評論板

Re: お嬢様に虐められて虐めましょう。【お礼小説】 ( No.128 )
日時: 2012/12/24 14:34
名前: 黒猫ミシェル (ID: G1Gu4SBX)

「行ってらっしゃい」

「…いってきます、パパ」

父さんが私の頭を優しく撫でてくれたけれど。
私の気分は晴れなかった。

「練習の時の、麻衣になるんだよ」

「はい」

麗華様に敬語を使わなければいけない。
友達なのに何でと、そればかり思っていた私。
父さんの気持ちなんて、全くの無視。
幼い私は何て馬鹿なのだろうと、後悔の念に苛まれる。

「れいか…れいか様のきょうしつ…」

「どうかしましたか?」

「あ、あの…れいか様はどこですか?」

「まっ!!」

途端に、相手の顔が青くなった。
身なりからして、おそらくここの先生だろう。
銀の眼鏡をかけた、とても神経質そうなヒトだった。

「…いつもの方は?」

「パパ…いえ、父がなにか?」

「何でもありません。…そう、あなたが娘さん…?」

「はい。それで…麗華様は?」

徐々に練習の時の喋り方を。
身のこなしを。
ただ、父さんの言付け通りに。

「私、麗華様のしようにんで、芽衣といい…申します」

「芽衣さんですか。麗華様は…そう、ね。…トイレです」

「トイレ?」

「私今から急用がありますので、失礼」

そそくさと立ち去ってしまった先生。
とても狼狽えていたと思う。
この時私は、先生まで様付けしていたことに驚いた。

「トイレっていったいどこにあるのかな?」

とても広い学校だった。
歩いても歩いても、トイレなど見つからない。

「はぁ…つか、…た」

父さんが車の中で待っている。
娘が粗相をしていないか気が気でないだろう。
早く、麗華様を見つけなければいけなかった。
ある教室を通りかかった時、罵声が聞こえた。
とても甲高くて、汚い声。

「生意気なのよ!!」

「何が麗華よ!!ただのごみじゃないの!!」

「何よその態度!!私たちの方が年上よ!?」

「…く、ぅ」

その後聞こえてきたのは呻き声。
それでも、さっきの声よりは澄んだ綺麗な声だった。
私の大好きな友達の、声に似ていた。

「あら、今日は泣かないのね?」

「あらあら、血が出ちゃったわ。ごめんなさい?」

「大丈夫よ。だって、このこの家お金持ちだもの!!」

「ねーっ?」

ドアに手を掛ける。
もしかしたら、麗華様もいるかもしれない。
少し開けて除きみた。

「っ!!?」

息を呑んだ。
そこに見えたのは信じられない光景だった。
麗華様が、たくさんの女子に囲まれていた。
それはもう、嫉妬で醜くく歪む心を持つ女たちに。

「何よそのドレス!!」

「学校に着てきていいと思ってるの!?」

「やだぁ、自慢に決まってるじゃない」

「そうよそうよ。『わたくしの家はお金持ち』ってね!!」

「あははっ!!」

何も言い返さない麗華様。
そういえば、あの時の麗華様は目が赤かったっけ。
ドレスも汚れていた。
声だって、泣いた時のような掠れた声だった。

「れいか……」

「誰!!?」

「きゃっ…」

開かれたドア。
見つかる私。
驚きに見開かれる麗華様の瞳。

「ナニ、アンタ?」

「メイドフクキテルワ!!」

「モシカシテコノコ、レイカノ!!?」

「コッチツレテキテ!!」

飛び交う言葉、耳に入らず。
暴然と私は、初めて見る麗華様の姿を見つめていた。