社会問題小説・評論板

Re: お嬢様に虐められて虐めましょう。【自分投票】 ( No.130 )
日時: 2012/12/25 13:16
名前: 黒猫ミシェル (ID: G1Gu4SBX)

「で、あなたはだぁーれ?」

「あ…私、その…」

オロオロとしている私に、年上の女の人が詰め寄る。
とても怖い顔だった。
私はただ下を向いて俯いていた。

「ハッキリ言いなさいよ!!」

「何あんた、麗華のお友達?」

「麗華の?ねぇ、そうなの!?」

「お友達?…麗華に?ウソでしょー!!」

お友達?

お友達?

お友達?…違う私は。

「おともだちじゃ、ありません」

「……麻衣?」

「麗華様はわたしの、ご主人様、…です」

「何を、いって…」

瞬間聞こえる笑声。
わたしは思わず耳を塞ぎたくなった。

「そうよね!!あの麗華にお友達何ていないわよねぇ!!?」

「ご主人様ですって!!流石お金持ちは違うわよね!!」

「あら?麗華が涙目よ?」

「そうよねー?裏切られちゃったものねー?」

裏切った?

嘘。

だって私は、本当にお友達じゃないもの。

ただの使用人だもの。

麗華様の、麗華様に仕えるメイド…。

父さんと、約束したから……。

しょうが、ないよね?

「ね、ねぇ、麻衣?」

「……」

「麻衣はわたくしのお友達よね?親友、でしょう?」

「いえ」

頼りなさ気な瞳が、揺れながら私を見ていた。
声は震えていて、身体は小刻みに震えている。
そんな元親友の姿。
そんな今の主人に、私は何が出来るのだろう?

「見苦しいわよ麗華!!」

「何が『親友よね?』よっ!!」

「メイドが親友?意味わかんなーい」

「メイド何かじゃ…麻衣は、本当に…」

「麗華様…」

縋りつく麗華様の手を、私はさり気なく避けた。
そう、言わなくては。
大丈夫って?
違う。
私は親友だよって?
ううん。
父さんに言われたでしょう?
ホラ、父さんのいう事は聞かなくちゃ。
約束破っちゃいけないんだから。

「お嬢様お迎えに…あがりました。お荷物を、お持ちします」

「ま、い…」

「ふざけないでよ」

「麗華は私たちと遊んでるの!!」

「そうよ!!ご主人様の遊びをメイドが邪魔していいわけ?」

そうか。
麗華様は遊んでいるんだ。
あれはそういう遊びなんだ。
私はメイドだから、邪魔なんてしてはいけないよね。
そう、お嬢様の後ろに、いなきゃ。

「それじゃ…私は、ここで」

「麻衣、いやよ…」

「遊びが終わりましたら…呼んで下さい」

「麻衣!!」

「失礼します!!」

これは裏切りじゃない。
メイドとして、正しい事をしただけ。
父さんが、先生が教えてくれた通りに、しただけだから。

「ごめんね、れいか」

でも、心の中では分かっていた。
自分に言い訳をしているだけだって。
こんなの、ただの裏切りでしかないって。
自分の身可愛さに、親友をーーー裏切ったんだだと。

「ごんなさい、麗華様…」

私は振り返らずに、父さんの所にかけていった。