社会問題小説・評論板
- Re: お嬢様に虐められて虐めましょう。【自分投票】 ( No.177 )
- 日時: 2013/08/08 13:48
- 名前: 小説カキコ別館 (ID: IcK/upD1)
【短編】花言葉
ふと空を見上げた。
思い出すのは優しい笑顔。
『笑ってよ』
どうして?
貴方の方が綺麗な笑顔をするのに。
『泣かないで』
どうして?
悲しい時は泣いて忘れてしまうの。
『怒らないの?』
どうして?
そんな必要どこにも感じないわよ。
そう答えれば、貴方は悲しそうな顔をした。
ねぇ、そんな顔をしないで。
貴方にはそんな顔より笑顔が似合うわ。
そんなありきたりな私の言葉に、彼は言ったの。
『君にも笑顔が似合うよ』
本当に?
私に笑顔が似合うの?
彼の言葉なら、信じてみようと思った。
『はい』
どうしたの?
この綺麗な薔薇の花束…。
『君の為に買ってきたんだよ』
私の為に?
『うん。僕たち恋人の一年間記念だよ』
嬉しかった。
私の為に彼が買ってくれた薔薇。
赤い赤い、真っ赤な薔薇の花束。
『はい』
二年間記念?
『そう。僕たちが付き合って二年たったんだ』
そう言って、彼は幸せそうに微笑んだ。
ありがとう。
真っ白な薔薇の花束を。
枯れるまで飾って毎日見るわ。
『はい』
ありがとう。
もう三年経ったのね。
『綺麗だろう?』
ええ。
とっても鮮やかなオレンジ色ね。
嬉しいわ、ありがとう。
『ごめん。今週は会えないや』
仕事が忙しいの?
『うん。ごめんね』
嘘吐き。
仕事何てしてないくせに。
気付いてる?
他の女の匂いがするの。
爽やかな柑橘系の香りがするわ。
『はい、遅くなってごめんね』
ありがとう。
でも…ねぇ、どうしてそんな顔してるの?
『…四年経ったんだね』
えぇ、そうね。
なのに何で嬉しくなさそうなの?
『僕さ、ある決まりを作ってるんだ』
決まり?
『そう。好きになったヒトを必ず落として』
…。
『三年経ったら殺すんだ』
私を殺すの?
『うん。決まりだから。それに僕、三年経つと飽きちゃうんだ』
でも私達は付き合って四年経つわ。
『どうしてかね、君を殺せなかったんだ。でもやっと決心したよ』
私を殺したら、今付き合ってる子の所へ行くのね。
柑橘系の香りをまとうその人の所へ。
『気付いてたんだ。まぁ、当たり前か』
あんなに匂いさせてたもんね。
そう彼は私の好きな笑顔を浮かべた。
『はい、これが君への最後のプレゼント』
黄色い薔薇の花束。
とても、とても、綺麗だわ。
『あれ?泣いてるの??』
泣いてないわ。
だって、目から何も滴れてはこないもの。
『まぁ良いや』
それじゃ、彼は微笑んで帰って行く。
『愛していたよ。…例え君が、声を出せなくても』
ドッカァッッン
抱えていた黄色い薔薇の花束が、音をたてて爆発した。
「あら?泣いてるの?」
『泣いてる?僕が…?』
「気付いてないの?目から涙が滴れるわ」
『そう…何だ…』
マリアナ…。
僕は始めて、泣く事が出来たよ。
君を殺したおかげかな。
ねぇ、ありがとう。