社会問題小説・評論板

Re: ヤクブツGirl*〜オリキャラ募集です!〜 ( No.10 )
日時: 2012/08/16 18:42
名前: 菜々希 奈菜 ◆mkSlAKVcCY (ID: CFE7lDA5)

#7〔回想シーンです〕(乙香目線)


その日は久しぶりにお父さんと出かけた。
手をつないで。うれしくて鼻歌を歌っていた。

こんなにうれしい気持ちは久しぶり。
気持ちが軽くて、弾むようで。

どこに連れて行ってくれるのか期待とうれしさで満たされていた。

すると、車を降りて着いたところは大きな木が立つ丘だった。
とてもいい風が吹いていて、まるで天気が私の心の鏡のように。

ぱっと降りて丘の上を上る。お父さんも後ろからついてきた。
丘の上は町中見渡せるぐらいきれいだった。

『すごーい!すごいね!お父さん!』

笑顔で私は後ろを振り返る。しかし、
いつもこんなとき、笑顔で笑ってくれる父がとても暗そうな顔だった。
まるで一面がくもりで隠れてるかのように。

『お父さん?』

『ごめんな……乙香…………』

お父さんは急に下を向いて謝りだした。
急ないみょうな空気が流れる。とたんに冷たい風が吹き始める。

『え?』

『父さん……お前を連れていけないんだ』

どういうこと……?何が……?

さっきまでやさしく晴れていた空が曇り始める。
いやな不安が自分の心を包み始めた。

『許して……くれ……。』

絞ったような声でお父さんは謝り続ける。

『お父さん?ねぇ……?』

黒い雲が自分を包むかのように、もう不安なんていう言葉じゃ
あらわせないほどの苦しみが襲ってきた。

『お父さん……!』

そう叫んだときだった。
お父さんは私を強く突き飛ばし、後ろに走り出した。

突き飛ばされ頭を強く打った私は一瞬ぼやけばっと顔を上げた。
くらくらと揺れる脳内で私は何も考えれなかった。

わかったのは、さっきあそこにあった車がなくなっていた。
お父さんもいなくなっていた。ぽつぽつと雨が降り出した。

小さく遠のいてくエンジン音が耳に入ったときには、
大きな雨が降り注ぎ、私の涙もあふれ出てた。

大きな声でなきじゃくるのではなく、ひらいた目から大粒の涙が
あふれ出てきた。

なく力がなかった。感情に任せるだけ。

嵐のような雨が降り続ける中、私はそこでただ座っていた。