社会問題小説・評論板

Re: ヤクブツGirl* ( No.6 )
日時: 2012/08/10 16:39
名前: 菜々希 奈菜 ◆mkSlAKVcCY (ID: CFE7lDA5)

#6

「なるほどな。」

私が死に掛けたあのときから数分たった。
知衣があのときの状況を手際よく理解してくれ、考え込んだ。

「お前誰かに恨みもたれたことあるか?」

「ない。はず。」

私の自信なさげな答えに知衣ははぁとため息をつき、
歯を食いしばった状態で頭をかいた。

「はずってなんだよ」

「心当たりがあるってこと。」

小さく私はつぶやいた。
頭の中にある人物がひとつ浮かび上がった意味だ。
利那とかのやつじゃない誰かが……。

「だれだ?」

「……秘密」

まだ知衣にはいえない。
もし言ってしまって知衣がなにかをやらかすとめんどくさい。
そこまで考えないと人生はやっていけないと思う。

「ならいいけど」

知衣は、最近つめたい反応しかできなくなっている。

私は体をスッと起こして、屋上の扉を開けた。
異妙な空気の中にドアのきしむ音が聞こえる。

「この問題は私が自分で解決するよ。だから知衣は静かにしてて」

知衣は静かに黙って下を向いた。
無感情のサインだ。

私が後ろを向いて出て行こうとしたとき、
知衣がふと小さな声で

「気をつけろよ」

そう声をかけてくれた知衣はやっぱり下を向いたままだ。

「…………」

私は少し知衣のほうを向き、ゆっくりとドアを閉めた。

ドアが閉める寸前、知衣がこっちを見ていた。
何かを伝える目で。