社会問題小説・評論板

Re: いじめっ子といじめられっ子と傍観者と偽善者 ( No.16 )
日時: 2012/10/22 13:36
名前: はこりんご (ID: mJV9X4jr)

放課後。
きてしまった地獄。

今すぐ家に帰りたい、その気持ちでいっぱいだった。
しかし、それは不可能だった。

栗香は帰る用意をして私のもとへ来る。

「ねぇ〜♪どこに行く?」

栗香はそう言って私の机にカバンをおいた。
私は自分のカバンを床においた。

ここで逆らったりしても無駄だ。

そんなことは昔からわかっていた。

加奈はにっこりわらい、栗香にこう言った。

「夢の家に行こうよ!」

栗香はわらっていた。

最悪だ。

わたしの家に栗香たちが来る。

家に帰りたいという願いがこんなかたちで叶うとは思わなかった。

こんなことを望んだわけではない。

「いいよね?夢ちゃん‥‥‥‥‥‥」

栗香の声が怖い。
栗香の存在が怖い。
栗香のいる学校が怖い。
もう、世界が怖い。

うなずかないとまたシツケされる。

でも、家に栗香たちが来たら、すべてが絶望的だ。

「は‥‥‥‥‥はい。」

震えた声で、家にくることを許可してしまった。

それ以外どうすればよかったのだろう。

どっちみち私は傷つくだけだ。

「じゃあ、行こうか。」

3人でわたしの家へ。

今日はとりまきたちはいないみたいだ。

きっと、部活だろう。

私は部活なんて興味はない。
それに、もしも部活に入りたくても、
入れないでしょ?きっと。

みんなで青春ごっこのために放課後をつぶす気はない。


「おじゃましま〜す!」

栗香たちはわたしの家につくとハイテンションでそう言った。

私は自分の部屋にカバンを置いてからリビングへ。

すると栗香はソファーでくつろいでいた。
勝手にテレビをつけ、テーブルにおいていたクッキーを食べていた。

「夢、飲み物」

加奈はそう言って、カバンの中からノートを取り出した。

私は冷蔵庫からジュースを出して、栗香たちにわたした。

「私も、夢って呼んでもいい〜?」

栗香はかわいい声でそう聞いた。

私にはうなずく以外の選択肢はなかった。

栗香は喜び、コップを片手にクッキーを食べる。

その姿はお嬢様のように見えた。
上から目線でしゃべり、すべて自分の思いどおりと思っている。

それに、栗香は実際、モテる。
男子から告白なんて驚くことではない、というくらい。

「夢、携帯持ってないの〜?」

栗香はそう聞くとポケットから携帯を取り出した。

私は自分の携帯を栗香に差し出した。

今は素直に言うことを聞かないと、家の中がめちゃくちゃになる。

「メアド交換しよ〜」

栗香がそう言った時にはもう、私の携帯は栗香がもっていた。

強制的にメアドの交換。

メアドが今までバレなかったのもおかしかったのかもしれないが、
メアドは絶対に知られたくなかった。
どんなことをされるかわからないから。

「いつでもメールしてね♪」

栗香はそう言って私のケータイを、私の顔に投げた。

ケータイは私の顔に当たった。
すごくいたかった。

栗香は笑いを必死にこらえている。

加奈はその瞬間をケータイで撮っていた。

顔が痛い、心が痛い。

もういやだ、何もかも。

私は栗香をにらみそうになった。

しかしそんなことをしたら、あの時と同じ。

またシツケされるだけ。

それなら、私は___________わらえばいい。

「ごめんね。わざとじゃないの〜」

わらいながらそう言う栗香。
加奈も一緒にわらってる。
そして、私もわらう、にっこり、声はいっさい出さずに。

その時、栗香と加奈はわらうのを止めた。

なんでわらっているの?とでも言いたいような顔で私を見つめていた。

「なんなの!あんた、ムカつくのよ!」

栗香はそう言って私にジュースの入ったコップを投げた。

私はとっさに顔を腕でかばった。

コップは割れ、その破片が私の腕にささった。

私は必死にわらった。涙がこぼれそうだった。
今にも泣きそうだった。
でも、私はわらった。

痛かった。すごく痛かった。
しかし、腕は痛くなかった。

そのかわり、心臓が張り裂けそうだった。
心が痛かった。
痛くて、痛くて。おかしくなりそうだった。