社会問題小説・評論板

Re: いじめっ子といじめられっ子と傍観者と偽善者 ( No.5 )
日時: 2012/10/21 01:16
名前: はこりんご (ID: mJV9X4jr)

私の助けを求める声は誰にも届かなかった。

必死に出したその声はあわのように消えた。

「夢ちゃん。
 私に逆らったりするとどうなるか‥‥‥わかった?」

ゆっくり、静かな声で栗香がそう言った。

私は顔を上げ、たてに首をふった。

栗香は私を見て、最後にこう言った。

「次。あんな目をしたら、
 こんなんじゃすまさないよ‥‥‥‥。」

とても低くて怖い声。

私はまだふるえが止まらなかった。

私は栗香にただ一言、つぶやくように言った。

「ごめんなさい」

そして私はまた下をむいた。

栗香は教室の外へ出て行った。

とりまきは傍観者に後片付けを頼んで‥‥‥いや、
おしつけて。栗香のあとをおった。

「夢ちゃん。大丈夫?」

偽善者の沙奈は私に手を差し出した。

さっきまでみんなといじめをしていたくせに‥‥‥
そう思ったが、口には出さなかった。

私は立ち上がることがやっとだった。
よろけながらも自分の机へ向かう。

無事な荷物だけをカバンの中に入れて教室をあとにした。

先生とすれちがったが、
びしょびしょの私を見ても先生は何も言わなかった。

何もかもがいやになった。

「自分を守れてよかったですね。」

先生に聞こえるように少し大きな声で言った。

私はなにを言っているんだろう?と思った。

だって、しょうがないことなんだ。
みんな仲良くなんて無理なんだから。
誰かをイケニエにしないといけないじゃないか。

思った通り先生はきまずそうにふりかえる。

「何でもないです。」

そう言うと私は走った。

もう本当にいやだ‥‥‥‥

みんないじめるか見て見ぬふりするだけだ。

助けて‥‥‥‥。もういや!!‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
そう心の中で叫ぶが、その声は誰かに聞こえるはずもなく、
私はしゃがみこんだ。