社会問題小説・評論板

Re: いじめっ子といじめられっ子と傍観者と偽善者 ( No.8 )
日時: 2012/10/21 01:46
名前: はこりんご (ID: mJV9X4jr)

歩いて、歩いて、ただ歩いた。

誰にも会いたくなかった。

自分がみじめでもっといやになるから。

ここはどこだろう?と思いながら、ただ歩く。

帰りたくない。帰りたい。2つの感情がまざった。

足が痛い。心が痛い。

「たす‥‥‥‥‥‥‥‥けて、誰か‥‥‥‥‥‥」

泣きながら、誰にも聞こえないような声でつぶやいた。

もう、誰でもいいから声をかけてほしい。
ただ、『もう大丈夫だよ、よく頑張ったね。』って言ってほしい。

私の一番望んだ言葉。

「ねぇ。誰か!」

消えてしまえと思うぐらい残酷な世界。
目をつぶって見て見ぬふりする傍観者。
いい人ぶって結局裏切る偽善者。
そして、人を傷つけて生きていくいじめっ子。

ただ、普通に生きたかった。

もう、幸せなんて贅沢は言わないから、ただ。
いじめを止めてほしかった。

「こんなところで何やってるの!?」

聞こえた声は、とてもあたたかかった。

「お‥‥‥‥母さん‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥?」

お母さんは驚いた顔で私を見ている。

私もきっと同じような顔をしているだろう。

「なんで!学校は!?」

お母さんはそう言うと私が泣いていることに気がついた。

お母さんはおどおどしながら、
でも、確かにおこっていた。

「わ‥‥‥‥私‥‥‥
 学校で‥‥‥‥‥栗香に‥‥‥‥‥
 いじめられてるの‥‥‥‥‥。
 ずっと言えなくてごめんなさい。
 でも、お願い、助けて。」

お母さんはビックリした顔をしていた。
しかし、すぐに悲しそうな顔で涙を流した。

「つらかったね、夢。
 もう大丈夫よ‥‥‥‥今まで頑張ったね。
 もう、お母さんがいるからね」

涙が止まらなかった。

さっきまで残酷だと思っていた世界が、今はすごく輝いて見える。

「お母さん!お母さん!お母さん!お母さん!」

ただそう叫んで泣いていた。

お母さんは私の頭をやさしくなでて、
ただこう言った。

「大丈夫。大丈夫だよ。」

声が出なかった。涙があふれた。
立つこともできなくて、しゃがみこんだ。

朝からずっと歩いた。残酷な世界から逃げるため。

でも、こんなとこまで来なくても、家に帰れば。
私の望む世界が待っていたんだ。

ただ、お母さんにすべてを言えばよかったんだ。

とても簡単で、しかし。
とても難しいけど相談するって、すごいことだな。
とただそう思った。

私の右手の傷は少しずつふさがっているように思えた。

昔つけた。消えない傷。