社会問題小説・評論板

Re: 椅子取りゲーム ( No.29 )
日時: 2012/12/27 18:30
名前: 小説馬子 ◆MiJ.aMrglc (ID: 0inH87yX)  


クラスの男子が観衆となり、騒ぎだす。

女子は突然の暴力に戸惑いつつも、明かに吉田のことを睨んでいた。

「みんな、悪かったって。本当にお腹が痛かったんだ。」

健介が目を涙ぐませながら謝る。

「はぁ?いまさら何言っちゃってんの?

ほら祐樹、蹴り飛ばせよ!」

周りの観衆が俺の背中を小突く。

俺としては、一回殴って仲直りするつもりだった。

だが、観衆は完璧におもしろ半分で健介を痛めつけようとしてる。

ここで、反抗すると観衆全員からの蔑んだ目、罵声、暴力を受けるかもしれない。

恐い、恐い……

俺のクラスはこんな狂犬揃いだったか?
いや、違う。皆も健介を恨んでたんだ。

そして、俺がさっき殴ったことで、かろうじてとめていた感情が暴発した。

「おい、祐樹。早くしろよ〜!!」

もしここで俺が退いたら、俺だけでなく健介がこの観衆全体から暴力を受ける。

ごめんな。

俺は心の中で謝ると、足を大きく後ろにひいた。

そして、勢いよく前へ蹴りだす。柔らかいけどなにか重い何かが当たる感触。

俺はこの日を忘れない。
俺はこの時の健介の裏切られたような顔を忘れない。

健介は蹴飛ばされ、ゴロゴロと転がる。俺はサッカー部だ。健介は口から血を少し出していた。

口を切ったのか、俺の蹴りが腹に当たって身体の奥底から出たのか。

ただ、俺の頬に一滴の生暖かいものが伝った。
皆に背中を見せているので、誰かに見られる前に舐めるとしょっぱかった。