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「相川さんは英語と数学がイマイチ、国語は最近上々だね」

　面談室で机を挟んで女教師がにこやかな笑顔を浮かべてる……つもりだと思うけど正直気持ち悪い。

「はぁ」

「大丈夫。受験までまだ時間はあるわ」

　時計のカチカチ鳴る秒針がうるさい。女教師の甘ったるい声もうるさい。

「……ただ、第一志望は厳しいかな？本当にここに行きたいの？」

　机の上には一枚の紙。

　今考えてる受験スケジュール。３月始めにあたしの第一志望がある。

『県立虹金橋高校（にじかなはしこうこう）』

「変えたくない、ここがいいんです」

「なんでここにこだわるの？他にもいっぱいいい学校あるよ？」

　正直、学校はどこでもいい。ただ、由岐がこの学校を受けるから。

　あたしは由岐についていきたいから。

「そこがいいんです」

　まぁ、そんな不純な理由って言ったら反対間違いなしだけど。

「そんなに強い意志があるなら、頑張りなさい。まだ時間はあるから。今日はもう帰りなさい」

　先生は立ち上がって、面談室のドアを開けて出ていった。

　あたしはスカートのポッケからケータイをだす。

　現実逃避したくなる世界でも、すぐに別の世界に入れる。

　ブックマークから『小説カキコ』を開く。

　あたしは読み専ユーザー。名前は現実逃避。

　このサイトはあたしに与えられた唯一のオアシス。テスト、進学、成績、女教師……全てが消えてあたしは小さな画面に綴られた物語を読む。

　あたしが最近はまってるのは、社会問題板の『学園格差』

　あたしと同じ境遇の少女の話。暗くて、成績不良で、出席番号が先頭。

　作者は月光ってユーザー。




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