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　周りの人達は気付いているのかいないのか、誰1人として反応しない。先生の前だからだろうか。クスクスという笑い声も聞こえてこないし、誰かがあの女子を責めたりする事も無い。
　私には、そんな状況が異常だとしか思えなかった。だって普通、あんな目立つ様な事をしたら絶対誰か1人は気付くはずなのだ。
　いくら先生がピリピリしているとは言っても、少しくらいは反応しても良いはずだ。
　それなのに何で、皆何も言わないの……？
　静かすぎる空間の中で、私は誰かに問いかける。答えはすぐに返ってきた。

"それはね、あの子がいじめられてるからさ"

　自問自答。もう既に分かりきっていたはずの答え。
　あの子は——紗希ちゃんは、クラスでいじめられているのだ。
　だから、誰も何も言わないんだ。きっと先生の前じゃなかったら、皆は大声で笑っていた事だろう。
　嫌がらせの手紙と、止まない悪口。それから、わざと蹴り飛ばされた足——。
　紗希ちゃんに対する、いじめ。
　紗希ちゃんは、もう人気者なんかじゃない。悪口を言う側から、悪口を言われる側に転落したんだ。