社会問題小説・評論板

Re: 【壊れた教室】そこに居たのは、 ( No.9 )
日時: 2014/02/17 13:52
名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU (ID: HmBv7EUE)

 昨日私は欠席したから、自分の席がどこなのか全く分からない。どうすれば良いんだろう……。私は慌てて、辺りをきょろきょろと見渡す。
 するとその時、教卓の上に紙が置いてあるのを見つけた。気になって近づいてみると、その紙には新しい座席が書かれていた。
 一体私の席はどこだろうか。私はそうワクワクしながら、座席表を見る。そしてすぐに、窓側の方に自分の名前を見つけた。
 次に見つけたのは、紗希ちゃんの名前だった。紗希ちゃんの席は私の前で、しかも同じ班。
 凛ちゃんとは同じ班になれなかったが、私はそれでも良かった。だってあの"紗希ちゃん"と同じ班になれたのだから。今まではただ憧れているだけだったけれど、今度は紗希ちゃんと仲良くなれるかも……。
 私の心の片隅に、そんな小さな希望が生まれた。


——それから2週間。
 私と紗希ちゃんはよく話すようになり、楽しい日々が続いた。
 紗希ちゃんが、私の事をどう思っているかはよく分からない。でも、少なくとも私は紗希ちゃんの事が好きだ。それは恋愛感情ではなく、純粋に友達として好きだという意味。
 今までもずっと私は紗希ちゃんに憧れていたけれど、その思いは今も膨らみ続けている。だって、紗希ちゃんは。私みたいな人にも話しかけてくれるし、優しいし、明るくて、可愛くて、積極的で……。良いところを挙げたら、本当にキリがない。そんな、完璧な人だから。

 そうだと、思っていた。今まで……ずっと。


「今日の体育さー、あの子マジでウケたんだけど!」
 女子トイレに突然響き渡ったのは、聞き覚えのある声だった。"体育"……その言葉を聞いた瞬間、私の心臓はドクドクと脈打ち始める。
 するとさっきとは違う声が、くすくすと笑いながら言う。
「笑いこらえるの超大変だったんだよねー、あの時! ていうか、あの子と私席近いじゃん? だから最近よく話すんだよね」
 狭くて暗い、トイレの個室の中。私はその会話を、黙ってこっそり聞いていた。
「最悪じゃない? あの子と席近いとか。だってあの子ってさ、いつも本読んでばっかりで暗いじゃん。それにどんくさいし。来年も体育祭の大縄跳びあるのに、あの子のせいで記録伸びなかったらどうしよう!」
「分かる分かる。あの子って、本当に運動神経ないよね。小学校の時もさあ……」
 その会話を聞いているうちに、私は悟った。
 "あの子"とは私の事……2人は、影で私をバカにしていたのだと。そしてその2人とは、紗希ちゃんと清水さんだったという事を。