社会問題小説・評論板
- Re: あなたとわたしの世界観 ( No.10 )
- 日時: 2013/02/06 20:44
- 名前: 藍永智子 ◆uv1Jg5Qw7Q (ID: 51/AcAGl)
- プロフ: http://〜修学旅行編〜
六学年に上がってから数か月が経過した頃に、修学旅行に向けて学年全体での話合いが本格化してきた。
「修学旅行」といえば、小学校最高学年になった瞬間に真っ先に思い浮かべてしまうようなビックイベントだったから——皆が、どこかふわふわと浮足立ってきてしまうのも無理はなかったと思うわ。
当時、またしても琴音ちゃんと少し距離をとって、その代わりに違う子と仲良くなっていた——とても身勝手な——私も勿論例外ではなく、毎日旅行先での生活に夢を膨らませ続けたり、友達とどのような「おそろいグッズ」を持っていくかを相談し合っている最中だったの。
その当時の友達の名前は、根本恵利。琴音ちゃんとは対照的な性格の人で、何にかけても大雑把、真面目という言葉がお世辞でも結びつかないような彼女と一緒にいることは、性格が暗くて、根っからの深い付き合いを求めた琴音ちゃんといるよりもはるかに楽だった為か、私はいつしか恵利ちゃんとばかり一緒に行動するようになっていて、琴音ちゃんとの関係は次第に疎遠になったの。
私と恵利ちゃんとの友情は、これより僅か半年後に跡形も残らないくらい、まっさらに消滅してしまうことになるのだけれど、そのことはまた後で書く事にするわね。
*
修学旅行出発当日、その日は普段よりもずっとずっと早くに集合しなければならなかったからって、目覚まし時計をいつもより多くセットしたりし頑張って早起きしたのを覚えているわ。
わたしは昨晩荷造りをしていたので忘れ物がないかしら、って出発直前まで心配していたのだけれど、そんな心配は無用だった。
だって、普段から真面目過ぎだ、もっと肩の力を抜け、って担任の先生にまで言われるような私よ? それも当然よね。……って、これは大分自惚れ過ぎね。
岩手県に向かう時の交通手段であるバスの座席は随分前に自分達で自由に決めていたから、私は当然恵利ちゃんと一緒に乗ることになっていた。
私は車酔いをする性質だったけれど、彼女よりはマシだったわ。
始終、アレ用のビニール袋を口に押し当てて、いかにも気持ち悪そうにして血の気の失せた真っ青な顔になっていたのだから。
いつ聞いても気怠そうな口調と、アヒルのようにぐっと突き出した唇が彼女の特徴。
それでも、そんな欠点なんて当時の私はまったく気にしなかった。
ただ、誰かと一緒にいられることが嬉しくて、「親友だ」って言ってもらえることが嬉しくて、私は恵利ちゃんと「親友」になっていったのよ。
だから、琴音ちゃんがどうなっているかなんて全く気にかけていなかった。
罪悪感を感じる事なんて一切無かった。
それどころか、琴音ちゃんよりも断然明るくて社交性のある恵利ちゃんと一緒にいる自分は、前よりも周りから良く見られているような気がして、琴音ちゃんとのつながりを断っている自分自身には優越感すら感じるときがあったのよ。
やっぱり最悪よね、私って。