ALLジャンルのオリジナル小説、ライトノベル、二次創作、ss小説やイラスト投稿なら「小説☆カキコ」

　修学旅行で泊まることになっていたホテルに行く途中、バスの中ではちょっとした事件が起きた。——同じバスに乗っていたクラスメイトの男の子二人が殴り合いの喧嘩をおっぱじめやがったのよ。
　その事件現場はというと、何の因縁があってか、私達乗り物酔い組の丁度後ろの席。
　私の隣でビニール袋を必死に口に押し当てていた恵利ちゃんの顔は、喧嘩がヒートアップしていくにつれて血の気が失せて、一層青白さを増していった。
「ちょっと、前に吐きそうな人がいるんだからやめてよ!!」
　私はこんなことを惜しげも無く口にしたけれど、相当無神経な言葉だったわよね。
　そもそも何が喧嘩のきっかけだったかというと——この四つの言葉。
　当時の会話を再現してみるわね。
　最初に喋ったのは背が低いが声だけは人一倍大きい、野球少年の茂木君で、後の方は、縦にも横にも広い体型でクラス一の嫌われ者の佐藤君よ。
「さっきからうるせえんだけど、ブタ!!」
「はあ？　お前の方が断然煩いだろ、チビ」
「んだと、デブ!!」
「サル!!」
「ブタ!!」
「サル!!」
「ブタ!!」
　……と、始終こういった具合。
　猿さん、豚さん、こんなくだらない喧嘩のためにつかわれてごめんなさい。——私はずっとそんなことを考えていたわ。