社会問題小説・評論板

Re: あなたとわたしの世界観 ( No.18 )
日時: 2013/02/15 21:40
名前: 藍永智子 ◆uv1Jg5Qw7Q (ID: W.cJ.AH8)
プロフ: http://〜修学旅行編〜

 昨晩の囁き声は未だ耳に残っていたが、それでもいつの間にか私は眠ってしまっていたようで——はっと目を覚ました時、枕元に置いておいた腕時計の時針は「4」時を指し示していたの。
 私の少しばかり重い体重を支えてくれているこのベッドは、動く度に木の骨組みがギシギシと苦しげな音を立てるので、常に神経を尖らせ、起き上がることすら一苦労だった。
(みんなはまだ寝ているのかしら……)
 慎重に首を回して部屋をぐるりと眺めてみたけれど、布団から起き上がっている人といえば私以外誰もいなくて、昨晩のざわめきが嘘だったかのように、静かな寝息だけが絶えず聞こえてきた。
 私はその時、何故だかとても落ち着いたのを覚えているわ。

 自分以外の誰もまだ目を覚ましていないと安心して。 
 「今日」という時間に参加しているのは私だけであるような気がして。
 「今」を見据えているのは、自分だけであるように思えて。

——私だけが、他の人とは違って見えて。特別に感じて。

 

 まだ太陽の日が上る前——明け方の静けさは、私の思考を更に加速させていたわ。

                 *

 暫くしてから不意に私は布団の上で正座をし始めたの。——何故かって?
 多分だけれど「まだ誰も起きていなくて暗い部屋の中で、それっぽいことをしている一人の少女」という構図に惹かれたのよ、私は。
 私だけかしら。
 作り上げられた自分の姿に酔っていたくなるときってあるじゃない? 私の場合は、それ以前の問題になってしまっているの。
 「作られた後の姿」に酔うのではなくて——酔うことが出来るような「自分の姿を作り上げる」のよ。

 だって、それが一番楽だと思わない?

 それで失うものは、きっとたくさんあるのだろうけど、一度そうしてしまった私にとって他の方法に切り替えることは面倒に思えて、とても億劫で。

 ああ、何度話の本筋から脱線するのでしょうね。

 やっとこさ時針は「5」の所を指すようになり——丁度その頃、計った様に何人かがまとまって「目を覚ました」。
 それは『もともと目は覚めていたのだけれど、自分と仲の良いあの子達はまだ起きていないようだから、私も寝ているフリをしていよう』ということだったのかもしれないけどね。

 恵利ちゃんが、眠そうではれぼったい目をごしごしとこすりつけながら起きてきたのは、それより僅かに後のこと。