社会問題小説・評論板

Re: あなたとわたしの世界観【参照300突破感謝】 ( No.36 )
日時: 2013/03/22 15:40
名前: 藍永智子 ◆uv1Jg5Qw7Q (ID: pK07DWyY)

 「あれ」を起こしてしまった後、私は随分、自分について考える時間をとったわ。

「私とは何ですか」
「私とは利己主義者です」

「私は我儘な人ですか」
「私は我儘な人です」

「私は独りが好きですか」
「『今』の私は独りが好きです」

 ひたすら自問自答の繰り返し。もう、脳の許容範囲なんてとうに超えてしまっていたのよ。
 そのせいで、世界に溢れている筈の色は、いつも以上に色褪せて私の眼に映った。
 そうやって散々、自分を追い詰めるように質問を繰り返していき、それも尽きてきた頃、浮かんできた質問はこれだったわ。

「私は人が嫌いですか」

 今までは、同語を反復するだけで済んでいたのに。
 この質問は、それを止めざるを得なかった。

 私は人が嫌いだったのかしら。それとも、嫌いではなかったのかしら。寧ろ、「大」が付くほど好きだったのかしら。

 初めて、答えが分からなくなったの。

 だって、今まで私が人を疎ましく感じたことは何度もあった——だけれど、その反面、人というものの存在をとても暖かく、大切だと思ったことだって、愛おしく感じたことだってあったのだから。
 誰か、自分以外の人から「独りが好きなんでしょう」と言われれば、私は即座に認めていた筈なのに。
 独りでいるときの、あの静けさも、開放感も、気兼ねしなくていい楽さも、私は大好きなの。
 皆が四六時中、誰かとべったりくっついて行動しているところを見たって、羨ましさなんて微塵も感じないわ。
 私だったら息がつまって、苦しくて仕方がないだろうに。——それなのに、あなた方はよく我慢できますね、って言いたいくらい。
 学校に所属している身としては何かと不自由も強いられるけれど、そのくらいは何ともないわ。
 独りでお弁当を食べることだって、自由にグループをつくれ、って言われたときに自分だけが孤立することだって、「自由」と引き換えならば、そんなもの。

 でも、それでも——。

「私は人が嫌いではありません」

 ようやく出すことのできた答えは、これで。

 好きかと問われたって、「はい」とは言い切れない。反対に「いいえ」とも。
 嫌いかと問われたって、「はい」とは言い切れない。こちらも同じく、反対に「いいえ」とも。
 結果として、肯定も否定もしない、この答えになった、という訳。

 もし「この世界には全知全能の神がいる」と教えられたとしたら、私は、果たして其処へ行くことを求めるのかしら。


 まあ、そんなこと有り得ないけれども。