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＃3　心の奥底(優香視点)


　いつもの曲がり角で、私は香織を待っていた。


　香織は親切だし、美人だし、勉強も、スポーツもできる。いつも平均点前後で一喜一憂している私に自分のことはそっちのけで勉強を教えてくれる。


　何でも話せる最高の親友だと思ってる。たぶん、向こうも。




　……でも、私には香織に言っていない、というか言えない秘密がある。


　香織に勉強を教えてもらっている時。
体力測定でペアになって一緒に測っている時。


心の奥のほうが、するりと冷たくなる。


　香織が何のとりえもない私と親友だなんて、なにか裏があるんじゃないかって思えてくる。
　何のとりえもない私との差を皆に見せ付けるために私と一緒にいるんじゃないかって。
　香織は鈍いからそんなこと考えたことすらなさそうなのはわかってる。


あ。


「優香ー！！！！！」


来た。

……パンをくわえて、スカートを翻して。
あー、パンツ見えそう。


この表裏のない笑顔のどこにもそんな醜い感情は見えないけれど、マイナス思考は止まらない。
ニコニコと話しかけてくる香織に生返事を返してスタスタと歩く。
そうこうしているうちに正門につく。
侵食してくる思考にストップをかけて、外の世界と中の世界の、境界線をまたいだ。