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＃5　すれちがい(優香視点)


私たちがドアを開けると、ざわめいていた教室が吸い込まれるように静かになった。

教室にいる全員が私たち、主に香織のほうを見て、ひそひそと話していた。
どこに行っても目立つのだ、香織は。


鈍感な香織はそれに気付かずに、変わらず世間話を続けていた。




あ。




また、すうっ、が来た。
私の中で、不安そうな天使と自信にあふれた表情の悪魔が分裂して、頭の中で会議をしている。








香織は計算で私といる訳じゃない。




いや、気付かないふりをしてるだけで、実際には自分と君とを見比べて心の中で笑っているかもしれないよ？




そんなわけない。親友なのに。




親友ねえ。親友って、お互いに信じあえる関係の事を言うんじゃないの？
一方は、自分と相手との差を比べて一目瞭然だと嘲笑う。一方は、相手を信じられずに疑ったまま隣を歩く。だけど2人は表面上の「親友だね！」をくり返す。
…滑稽だね。君と香織は、本当に信頼し合っているの？










ふるりと一回頭を振って、脳内の自分を振り払う。
誤解だと知っている。
親友だとも思っている。


なのに。


私の中の悪魔が唇の端を釣りあげた。
私が香織を避け始めたのは、この時からだ。