社会問題小説・評論板

Re: 裏切られるのに、慣れただけ。【オリキャラ募集中!】 ( No.64 )
日時: 2016/02/18 01:06
名前: くう ◆RbIa02uyMM (ID: vBQZrbVQ)

#8 始まり(優香視点)


あの「放課後、帰らず教室に残ってて。」という悪い予感しかしない言葉に、私はバカ正直に従っていた。やっぱり、考えられる綾香の行動は一つしかない。。



綾香はクラスのまとめ役だが人脈の広さと敵は徹底的につぶすその執拗さで、クラスの中の女王様的なキャラとなっている。その綾香が発する「いじめ開始」の合図は、瞬く間にクラス、いや学年中へと広がってゆく。別名、「赤紙」。

以上、綾香と同中の友ペディアより引用。



……なんて、おちゃらけている場合じゃない。足音が聞こえてきた。聞く者に恐怖を与えるようなその足音を、私は祈るような気持ちで聞いていた。




ふいに、ガラリ、という音と共に、扉が開いた。



「あれ、先に来ててくれたんだ。」

想像していたよりもやさしく、くだけた言葉遣いに私は拍子抜けした。


「ねえ、私をここに呼び出した理由って……?」
「あれ、私の噂とか、聞いてない?赤紙とか、……いじめとか。」

いじめ、という言葉を少し力を入れて行った彼女に、私は身震いした。


「う、うん。少し、噂で聞いたことがあるくらいだけど……。」

嘘だ。めちゃくちゃ知ってる。けどここではあえて言わない。


「あれ、嘘だから。」
「……え?」
「だーかーらー、ウ、ソ。あんなの、いじめじゃないよ。私はね、クラスの秩序を乱したやつに制裁を加えてるの。制裁、はちょっと間違いかな。体で教えてあげてる、とでもいおうか。つまり、教育ね。実際、それをしたクラスの悪者は波風立てない、素晴らしい人たちに変わった。だから、私はこれをやめない。これは、いわば正義なの。」

恍惚とした表情で話をする綾香に、私は恐怖を覚えていた。


「……それで、私は今の話で言う悪者ってわけ?」


「え?違うよ。」


「……へ?」

あっさりと違う、と言った綾香を見て私は混乱していた。だって、今日の流れや行動を考えて私以外が悪者です、なんて言える人、どこにいる?


「ああ、自分がやられるって思ってたの?だからあんなにびくびくしてたのか。違う、違う。あなたには、仲間になってほしいの。」
「仲間?でも、今日の体育の事は……。」
「ああ、あれは関係ないよ。いや、あるっちゃあるんだけど……。」
「な、なんで急に私を仲間にしようとしたの?」
「そう、今日の体育で横山さんの事を少し妬みがましい目で見てたでしょ。でも、入学式の自己紹介では二人は親友って言ってたじゃない。だから何か深いわけがあるのかな……って。」

この人はエスパーですか。

「つまり、ね。私たちが教育したいのは、
















横山 香織、ってわけ。」



予想はしていた、けれどその言葉がどれだけのショックを私にもたらしたかは、言わずともわかるだろう。



「何、そんな人生の終わりみたいな顔しちゃって。いい?私たちがやるのはあくまで『教育』なんだから。直ったらすぐにやめるわよ。」
「……なんで、香織なの?」
「だって、あの人クラスの和を乱すことばっかりしてるんだもん。あのね、きちんと並んだ100人の兵隊の行進の途中で一人でも逆方向に進んでいた場面を見たら、あなたはどう思う?列から引きずり出すか、また正しい列になるように教育するかどちらかを選ぶでしょう?引きずり出さないだけマシだと思ってよ。

それに、どんな理由や例を並べ立てて説得するよりもあなた自身が一番よくわかっているでしょう?



あなたは横山さんの事が、憎いもの。」



体中に電流が流れたかと思うほどの衝撃が走った。
また、頭の中の悪魔が私に語りかける。






そうだよ。君は香織が憎かったんだ。いつもいつも見下されて、ダシに使われて。香織をいい奴にする方法なんて、それしかないじゃないか。



君は香織が憎い。
君は香織が憎い。
君は香織が憎い。
君は香織が憎い。
君は香織が憎い。
君は香織が憎い。
君は香織が憎い。
君は香織が憎い。
君は香織が憎い。
君は香織が憎い。



気付けば私は、頷いていた。