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番外編　ある教師の物語


これは、3年前の、ある学校の、ある教師のお話。


＊＊＊


私は自分でも人より正義感が強い方だなって思ってた。
クラスで少しでもトラブルがあれば、下校時間を遅くしてでも皆に討論させ、解決してきた。


校長や教頭に何を言われようと、あの子達のためだったらなんだって出来た。


あの子達が、大好きだった。



でも、私だけ、だったんだね。そう思っていたのは。



あの子達はある日、全員で私をいじめた。
私には最初、理由がわからなかったよ。
だって、あんなにいい子達だったから。
あんなに仲が良かったから。
あんなに頭が良かったから。
あんなに、私の事を慕ってくれたから。


訳がわからなくて、私は一言つぶやいた。


「なんで？」
帰ってきた言葉はこうだった。


「あんたがウザいから。いつもいつも正義振りかざして、いつもいつも私たちを巻き込んで。社会に出たら『正義』なんて通用しない。むしろ、空回りばかりする邪魔な奴としか思われない。そんなに正論吐きたかったら、ここから出てけ。


あんたを必要としている奴なんて、ここにはいないんだよ。」


信じられなかった。なんで、もう一度つぶやいた声は、嘲笑にかき消された。




ずっと思ってた。
これは夢なんじゃないかって。これは夢で、目が覚めたらいつも通りの生活に戻るんじゃないかって。

でも、違ったね。本当に必要とされてなかったんだよね。
私が学校を出て行くときに、ベランダから雑巾を落とされて、笑い声が聞こえた時に、ようやくそれに気付いた。


そして決意した。

もう正義感を振りかざすのはやめようって。
学校では、強い者が『正義』だから。
いじめられないためには、いじめるしかないんだよ。


あの子たちには感謝してるよ。
正義なんか必要ないって、教えてくれてありがとう。

私はもう、自分を消して生きてゆく。