社会問題小説・評論板
- Re: 裏切り者には、制裁を。【活動一時停止のお知らせ】 ( No.94 )
- 日時: 2014/03/15 00:34
- 名前: 久留巳(元くう) (ID: bIbZMEkj)
- プロフ: http://名前変えました
#10 幻影(優香視点)
香織を虐めよう、そう決意した翌日から、私は香織とは話さなくなった。
鈍感な香織はきっと傷つかないだろう。
__そう信じて。
私の香織との関係と反比例するように、綾香たちのグループとはどんどん仲が良くなっていった。
今も音楽室へ行く道を、5人と共にしている。
話の内容は、ほとんどが映画や化粧の話題。
元々映画にもおしゃれにもあまり興味のない私は、もっぱら聞き役に徹している。
……それにしても。
綾香率いる5人のグループは、容姿端麗成績優秀、皆から一目置かれる存在の集まるグループ。
そんなところに私なんかがいてもいいのだろうか。
そう考えもしたが、以外にも私に対する5人の扱いは、とても優しいものだった。
__だからだろうか。
最近、自分が調子に乗ってきた気がする。
なぜだろう、最初は機嫌を取るために謹んでいた口も、私が考えるよりも先に動き出すようになった。
人間は欲深い生き物だ。
初めは自分の存在が許されればそれで満足だと考え、それが達成できたらその次は自分の能力を認めて欲しくなる。
正直言って、もっと貪欲になっていくであろう自分が怖かった。
でも、我慢できない。
そんなことを考えていると、隣にいた綾香に話題を振られた。
「優香はどう思う?」
私が考え事をしているうちに、話題は香織の悪口へと変わっていた。
少しでも目立ちたいという思いからだろうか、私は考えるよりも先にこんなことを口走っていた。
「か、香織って名前のやつなんてこのクラスにいたっけ?」
一瞬の沈黙。
のち、大爆笑。
「優香マジウケるんだけど!」
「確かに私たちだれの話してたんだっけ?」
言葉の意味を理解した綾香たちが、私の言葉に乗ってくる。
良かった。
引かれてない。
私の頭の中にはそれしかなかった。
やっぱり人は怖い。
本人がいない時は罪悪感なんて全く感じなくなる。
それどころか、思ってもいない言葉さえも、口にすると本当にそう思っていたのかと錯覚してしまうらしい。
嗚呼、また私は調子に乗っていくんだろうな。
頭のどこかで不安を感じながら、それでも今はこの楽しさを残していたいと強く願う自分がいた。