社会問題小説・評論板
- Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.36 )
- 日時: 2015/08/04 08:01
- 名前: 小麦 (ID: lkF9UhzL)
3.有栖川精華の哀れなる真実
拝啓 夜船月乃様
こんにちは。お元気ですか?
私の怪我は大分快方に収まり、今は別荘で休養をとっています。
私の実家にはあの事件のことで未だにテレビ関係者や物好きの野次馬がやってきます。私は未だに家に帰れません。
紫乃の父親はあの事件のせいで解雇され、今は資産で食いつないでいるものの、もともとは貧乏な家計だったようなので資産がそろそろ尽き果て、それに連日連夜いたずら電話がかけられ、ポストには嫌がらせの手紙がぎっしり詰められ、町を歩けば睨まれ、もうお金も人望もないなら、一家心中しかないと紫乃のお姉ちゃんがぼろぼろ泣きながら話していました。
いくら紫乃が私を切りつけて殺しかけたといって。
本当に悪いのはあの女だ。
あの女が裏で全部操っているくせに。
憎い。
憎い。
あの女はなんで死なないのか。
死ね。死ね死ね死ね。
こんな人生は、無意味だったと思う。
あの女に操られて生きてきたあの日々は私の汚点だった。
消し去りたいけど消えない。
私の身体に残った傷跡も消えやしない。完治は諦めた方がいいと医者に言われた。私はあの女に傷つけられたという紋章を一生身につけていくのかと思うと死にたい。
ごめんなさい。久しぶりに出す手紙だというのにこんな内容になってしまって。
月乃ちゃんは今の引越し先はどうですか?
そんなに若いのに使用人扱いって酷いと思います。
いくらそういう家系だからって。
同年代の女の子にいろいろと言われたら、私だって耐えられません。
耐えられなかったし。経験上。
本当に死にたい。どうか殺してと思っても死ねない。月乃ちゃんはどうか
鉛筆がぽきりと折れた。
ふと自分の書いた文面を見直す。
…駄目だ、こんな手紙。久々に手紙を送る昔の友達には見せられない。
ていうか最低じゃん。友達にしか吐き出す場所が無いとか。
ゴミ箱に手紙を捨てたと同時にベッドの横に置かれた小さな液晶テレビに目を向ける。思わず瞳孔が開いた。
『黎明女子学園生徒 生徒内で集団リンチ 被害者は死亡 前回の事件とも関係か』