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第五話



「犬塚さん。早く席につきなさい。」

教室へ戻ると、何も知らない代わりの先生が私にそう、話し掛けた。

「すみません………」

一応謝り、席に着く。

確か、一時間目は算数。
道具箱を開き、算数をとろうとすると……

「え…………」

私は小さな声でそう呟いた。

何でかって？

理由はね、












教科書が無かったから。













今の私の理由を聞いて、『忘れたんじゃないの？』って思った人、いるよね？

違う。

忘れたんじゃない。





「＿＿＿＿＿＿＿＿であるから、犬塚さん。m(メートル)の１０００倍は？」

「……えっと……………㎞…です。」

「正解だ。」

良かった。簡単な問題で。

「それじゃあ、犬塚。４KL (キロリットル)は？ 」

「……わかりません………」

ここは、正直に答えた方がいいよね？

「おいおい。こんなのも解けなくてどうするんだ。もうすぐ中学生だぞ？それじゃあ、他に、解けるやつー！」

先生は良いよね。

何も知らなくて。

「はいっ！私、答えます！」

そう、元気よく答えたのは愛羅。

「答えは、4000L(リットル)ですっ！良いですかぁ？」

「「いーです！」」

クラスの人が口々に答える。

愛羅、先生の前では良いこぶって………




許せない。