社会問題小説・評論板

Re: 朽ちる花のごとく ( No.1 )
日時: 2015/02/13 00:20
名前: 園原 (ID: NGqJzUpF)

第1話 女王様


_私は特別よ。

「伊賀崎さん!おはようございます!」
「美姫さまっ!今日もお美しいですね!」
「その髪型、とっても素敵です!」

メイクをして着飾る生徒が多いこの学校でも一際目立つであろう白い肌に、つやつやの唇。ぱっちりとした瞳は深い茶色。全く染めていない黒く長い髪は、地味な色でありながらも、他の生徒より際立って見える。

一見地味な見た目ではあるが、美姫はこの七々扇学院高等部の"女王様"であった。
大財閥の一人娘である美姫には、生徒はおろか、教師も逆らえなかった。美姫の父親は、学校に多大な寄付をしているからだ。
だから美姫がどんな横暴をしようと、学校側は見て見ぬふり。
事実、美姫が学校を支配していると言ってもいいだろう。

美姫が歩くだけで、大勢の生徒は道を開け、話すために駆け寄り、美姫が築き上げた、学校という"国"から追放されないように、と媚を売るのであった。
 
「…おはよう。」

少しの沈黙の後、美姫がその唇を開き言葉を紡いだ。
その美しく透き通った声と笑顔は、男子生徒は愚か、女子生徒までを虜にしてしまう。

誰かが嬉しさから奇声をあげたが、美姫は気にせずそこを通りすぎ、所属している2年B組の教室へと向かう。

「鈴木さん…転校、だって」
「ほんと?…まぁ、やっぱり…ねぇ…」

急いで歩いている二人の女子生徒とすれ違ったとき聞こえたその会話を美姫は逃さなかった。

転校…。

美姫はその言葉を呟き、小さく微笑んだ。

「はぁ…やっと消えた。」