社会問題小説・評論板

Re: 朽ちる花のごとく【第2話更新】 ( No.3 )
日時: 2015/02/13 19:10
名前: 園原 (ID: NGqJzUpF)

第3話 突然


「ねぇ、伊賀崎さん…」

近づいてきた女子生徒_藤城凛_を軽く睨むが、全く怯まずに凛は美姫の机を叩いた。

「…壊れちゃうわよ?」

ふふ、と笑いながら凛を見ると、周りにいたクラスメートたちも彼女に冷たい視線を送っているのが感じ取れた。

「ちょっ!?何やってんの凛!?やめてよ!!」

その時、先ほどまで凛と一緒にいた女子生徒が凛の肩を掴んだ。
高梨あずさ、だったか。美姫はろくに出てもいない部活の副部長。

「なんで、なんで、ゆーちゃんにあんなことしたの!?」
「やめてってば!」

高梨が凛の手を引っ張ってまた席に戻っていった。

なんなのあいつら。騒がしい。
ああ、確か鈴木の友達なんだったっけ?

あーあ。

ご愁傷さまでーす。

気持ちを押さえながら、阿里沙に優しく微笑みかけた。

「次のターゲット、どうしようか?」


__.....一週間前


「最近、何もなくて暇ね…」
「阿里沙もそう思うなぁ。なかなかターゲットも見つからないしぃ」

ぷう、と可愛らしく(ぶりっこ特有の)顔を膨らませた阿里沙と一緒に歩いていた美姫_すなわち女王様は、暇だった。

前のターゲットが不登校になってから一ヶ月間、新しいターゲットは見つからず、生徒にとってはいい意味で、美姫にとっては悪い意味で、平和であったのだ。

ターゲットが見つからずむしゃくしゃしている美姫は、いつもより言葉に棘があり、行動も落ち着きがなかった。

「ゆーちゃん、おはよぉ」
「おはよう、凛ちゃん」

その時前に見えたのは、同じクラスの鈴木優と藤城凛。
美姫は別に二人に恨みはないし、まず話したこともなかったのだが、今は別だ。美姫はずんずんと歩く足を速め、二人に近づいていく。

「ちょっ、美姫ぃ?」
「きゃあっ…」

美姫が早歩きになり、焦ってついてきた阿里沙が美姫に話しかけた時、か細い悲鳴が響いた。

「ゆ、ゆーちゃん!?」

阿里沙は足を止め、近くで様子を見ていた。

あまりよく見ていなかったが、恐らく美姫が優にわざとぶつかったのであろう。

優は廊下に踞り、足を押さえていた。
バランスを崩して足を捻ってしまったのだ。

しばらくすると、美姫は優と同じように廊下に倒れ込んで、すすり泣きを始めた。

「…」

阿里沙は察した。

これは演技、だと。

「私の鞄が…っ」

美姫が涙をすすりながら言い、誰にも見えないように小さくニヤついた。

それが、地獄の始まりであった。