社会問題小説・評論板

Re: 朽ちる花のごとく ( No.4 )
日時: 2015/04/29 09:57
名前: 園原 (ID: G1aoRKsm)
プロフ: http://ひさしぶりの更新です

第3話 地獄



「ひっく…ひっく……」

美姫がわざとらしくすすり泣く。

こいつはとことん性根が腐りきっている_と阿里沙がしばらく動けずにいると、美姫がすこし首を捻って阿里沙を睨んだ。

「あーっ!美姫だいじょぉぶ?」

睨まれた瞬間我に返った阿里沙は、焦りを全く感じさせない素振りで美姫にかけよった。

「ちょっとぉ…鈴木、だっけ?この鞄ちょー高いんだよぉ!?」

相変わらずのねっとりとした声で優に詰め寄る。
あまりの迫力に優が後ずさる。

阿里沙はそれを見て微笑み、優の手首を掴む。

「いッ…」

優が聞き取れないほどのか細い悲鳴をあげたが、阿里沙はお構いなしに手首を握る力を強くする。

さっきまであれほど威勢のよかった凛も、すっかり萎縮して、優の姿をただ呆然と眺めるだけだった。

「ちょうどよかったぁ。ターゲット、見つかったね、美姫」

何が【ちょうどよかった】のか。
自分から仕組んだ癖に。
阿里沙は自分の言葉に内心うんざりしながらも美姫のほうをちらっと見る。

「…そうね」

ゆらゆらと立ち上がる美姫の表情は、恍惚に満ちていた。

「覚悟、しといてよ?」

美姫が決め台詞のようにそう言うと、凛が優の手を引いて、逃げていった。

優が落とした、財布にも気づかずに。