社会問題小説・評論板

Re: 「「貴方にはわからないでしょうね」」 ( No.10 )
日時: 2015/11/03 18:01
名前: 蛍 (ID: IqVXZA8s)

[第8話]


朝、私が登校すると、教室が騒がしいのに気がついた。

「…は?それってどういうこと?」

「そ、そのままの意味だけど…」

教室に入ってきた私にも気づかず、皆の視線は二人の人影に注目していた。
驚いている人、茶化す人、心配そうにしている人、知らないふりをしている人—。
どうやら、万里花と亜未が口論になっているようだった。
亜未が万里花に逆らうなんて珍しい…。少し気になったが特に関わる意味もないので、席についた。

「いじめなんてやめてって、どういうことよ!?」

——それなら万里花に直接言ったら?やめてって

——出来ないんでしょ?そういうさ…中途半端な優しさがいっちばん迷惑

…え?どういう、こと?

「だから…芙美をいじめないでって…」

万里花の勢いにすっかり怖じ気づいた亜未が、私の方をちらっと見ながら万里花に言った。

「…別にあれは、いじめじゃないから。…ねぇ?」

万里花は突然私の方にくるりと体を向けると、笑顔で首をかしげた。一見はただの笑顔にも見えるが、私には有無を言わさぬ威圧の表情にも見え、思わず頷いてしまった。

「ほら、ね?」

万里花はその表情のまま亜未を見た。亜未はすっかり生まれたての小鹿のように目を潤ませ、かたかたと震えている。

「ていうか最初から亜未ってノリ悪くなかった?」

「わかるわかる、芙美の悪口言ってる時も何も言わないし。」

そんな亜未を見て、万里花の後ろにいた、取り巻きの美里と桃奈が口々に亜未を責める。

「それであげくのはてに皆の前で正義の味方気取りですかぁ?」

とどめには万里花がわざとらしく声を高くして、亜未に近づく。

「別に、私はそんなつもりじゃ…」

たしかに万里花や取り巻きの言うことは正しい。私だって、今さら亜未に庇われても、嬉しくもなんともない。

「ふざけんな。調子乗ってんのかよ?」

いつでも中立でいることは出来ない。どんな立場にいても、敵は必ず出来る。だけど、どちらかの立場に片寄っておいた方が、人生上手く渡れる。勿論、多数派でその集団の中で正しいといえるような立場につかなくてはならない。

「…あ、万里花さぁ、亜未と芙美ってね……」

「……皆さん、おはようございます。…少し騒がしかったようですが、何かありましたか?」

美里が"何か"を口にしようとした瞬間、チャイムが鳴り、先生が入ってきた。
誰かが「なにもありませーん」と言ったことで、皆が席につく。

「……美里、さっきのって」

「あ、うぅん、なんでもない」

後ろの席で展開される会話を聞き、ほっと胸を撫で下ろす。とりあえず万里花はまだ、私たちが双子だということは知らないみたいだ。
一つ気掛かりなのは、亜未のこと。万里花を敵に回したら、居場所はない。

これから、どうなるんだろう。