社会問題小説・評論板
- Re: 「「貴方にはわからないでしょうね」」 ( No.3 )
- 日時: 2015/10/31 11:15
- 名前: 蛍 (ID: RnkmdEze)
[第2話]
「皆さん、おはようございます」
チャイムが鳴ると同時に教室に入ってきた女教師。全身スーツ姿でポニーテール、遅刻したことは一度もない超真面目な人。だけど、出世しか目にないみたいだから、生徒は二の次。生徒がいじめられても関係ない。まぁ、いいけど。先生に庇われたら逆にいじめが酷くなるだけだもの。
「…起立、礼。おはようございます」
学級委員長である亜未は、透き通った声で号令をかける。そう、この声も、動作一つ一つにも、品がある。完璧な彼女のことが、私は大嫌い。
「今日は——で、—…ですから—……があります」
先生の無駄に長い話をBGMにしながら、私は窓の外を眺めていた。
雨は降っていないが、灰色の不気味な空がこれから起こる何かを警告しているように見えて、私はそっと窓から目をそらした。
「それではHRを終わりにします。委員長」
「はい。起立、礼。ありがとうございました」
亜未の号令を合図にやる気のない"ありがとうございました"が教室に響いた。
HRが終わると、クラスメートたちは次の授業のために準備を始めた。次は体育。確か今はバレーボールをやっていたはずだ。
「……球技か」
ぼそりと呟くと、夏前くらいにやっていたバスケットボールの授業を思い出す。固いバスケットボールを故意に投げられ、すごい痣が出来たことはまだ記憶に新しい。
サーブで速さが増したバレーボールを当てられたら…。想像するだけで吐き気がしたので、今日は見学することにした。
「…見学は…楯山だけか」
男勝りな性格だが女性である体育教師が、体育館のすみで縮こまる私をちらり見て小さく呟いた。
万里花を始めとした女子たちに睨まれたような気がする。
体ががたがたと震え、吐き気がだんだんと強くなってくる。
「ぅえ…ッぷ」
準備運動をする女子たちを見て、言葉にならない嗚咽をしながら、授業が終わるのをじっと待った。動かず、じっと。
準備運動が終わり、サーブの練習中、叩きつけられるような轟音を耳にしながら、ひたすら当てられないことを祈った。
刹那、バシィッという痛々しい音が体育館に響いた。
跳ね返ったボールが、数回バウンドしたあと転がり、誰かが拾っていった。
頬あたりがじんわりと熱を持ち、体中を痛みが駆け巡る。
…多分、この世に神様なんて存在しないんだと思う。
