社会問題小説・評論板
- Re: 「「貴方にはわからないでしょうね」」 ( No.6 )
- 日時: 2015/10/31 23:41
- 名前: 蛍 (ID: 9yNBfouf)
[第4話]
「あ…小日向くん」
「あれ!?俺の名前知ってるの?…でもゴメン、君の名前わかんないや」
彼はとなりのとなり、3組の小日向悠真くん。
多分小日向くんは覚えていないだろうけど、私は小日向くんに助けてもらったことがある。
亜未と遊びたいからという理由で、万里花に委員長の仕事を押し付けられた日のことだ。私は持ち前のドジを発揮し、先生に提出するクラス全員分のノートを廊下にぶちまけてしまった。その時、たまたま廊下にいた小日向くんはノートを拾い集めてくれた上に、わざわざ出席番号順に並び替えてくれた…なんていう、日常に過ぎない些細なこと。
「私は……」
楯山芙美、と言いかけて口をつぐむ。
私は、人と対等に接していいのだろうか?
私に、人を好きになる資格はあるのだろうか?
そのまま黙りこむ私を見て、小日向くんは不思議そうにして私の胸あたりを見た。
「ふぅん、楯山芙美って言うんだ。いい名前じゃん」
制服についていた名札を見て、彼は八重歯を見せて笑った。
私は慌てて名札を隠すと、うつむく。
絶対、今、顔赤い…!
「おい、悠真はやくしろよー。先行くぞ?」
「あ、ちょっと待って!…楯山さん、じゃあ」
友達らしき人に呼ばれた小日向くんは私に手を振り、そのまま走ってどこかへと去ってしまった。
私は胸を押さえ、しばらくその場に立ちすくむ。
駄目だ、駄目だ、と気持ちを押さえながら、ぎゅっと名札を握る。
「いい名前、かぁ」
はじめて言われたその言葉に胸を熱くしながら、私は教室へと戻った。
ドアを開くと、相変わらずの風景。
万里花だけがこちらを見ていたが、気にせず体操服をしまい、席についた。
「あー…芙美ちゃん、ごめんね?」
朝と同じように万里花が近づいてきて、謝罪する。
勿論反省する気はないのだろう。本人は舌を出しているし、後ろにいる亜未以外の取り巻きたちはくすくすと笑っている。
「まさか…あ、れ、だ、け、で倒れるなんて…ねぇ?」
「あんたのこと、亜未が運んだんだから感謝しなさいよね」
「ちょっと美里ちゃん、そのこと言わないでって…」
わざとらしく自分の唇をなぞる万里花に続き、美里という名の取り巻きと、亜未が言葉を発する。
私はボールを当てられた万里花よりも、煮えきらない態度の亜未に苛ついていた。あんたはいつもそうやって言葉を濁す。
とりあえずその場はやり過ごし、授業中の嫌がらせにも耐えると、遂に放課後がやってきた。
荷物を素早くまとめ、鞄を持って帰ろうとすると、私と同じくらいの背丈の誰かが、私の前に立っていた。
「…あの、話があるんだけど……」
「亜未…」
