社会問題小説・評論板

Re: 「「貴方にはわからないでしょうね」」 ( No.7 )
日時: 2015/11/01 00:06
名前: 蛍 (ID: 9yNBfouf)

[第5話]

——この人生が、もし、そういう名のゲームだったとしたら。

私は生まれたその瞬間に、ハードモードを選択されてしまっていたのだろう。


私の家は片親だった。 
母は犯罪一歩手前のことも平気でしてしまうような問題児であり、それは私の父であった人も同様に、だ。
母は17歳で私を産み、その翌年に父はどこかへと逃げ出してしまった。母は途方に暮れ、薬物かなにかに手を出したのだと思う。これは推測だが、思えば母はすこしおかしい人だったから。何かをぶつぶつ呟いたり、私に暴力を振るったり、突然優しくしてみたり、どこかへとふらふら行ってしまったり。

心も体もズタボロで、日に日にやつれていく母を私は見ていられなくなった。母が死んだのはそんな時。いつものように、ふらりとどこかに出掛けた母は、車に轢かれてしまったらしい。
そのころ4歳だった私は、母が死んでも特に何も感情を抱くことが出来なかった。何の感情も抱きたくなかった。

今まで私がさも一人っ子のように話してきたが、私には同い年の妹がいる。つまり、双子。
主に母に暴力を振るわれていたのは私。彼女は、——亜未は、母のお気に入りだった。

それから私たちはそれぞれの親戚に引き取られた。その親戚同士の仲がよく、家も近かったため、名字は違うけれど、まるで姉妹のように(姉妹だけど)仲良くしていた。

異変は小学校に上がった時に起こる。
当たり前のように亜未と同じ小学校に進学させられた私は、順風満帆な生活を送るはずだった。亜未さえいなければ。
私たちが双子であることは特に隠された情報でもなく、むしろ私たちは積極的に双子アピールをしていたつもりだ。

「なんで二人は双子なのに、ふみちゃんは可愛くないの?」

そんな時、同じクラスの男子がふとこんな疑問を口にした。
こどものどこまでも無邪気で素直な疑問。それは時に鋭利なナイフとなって私の心を抉った。

「……えっと…」

私は亜未とお揃いの服をぎゅっと握ってうつむいたまま、なにも言えなくなってしまった。
結局男の子の親が家に謝りにきたけれど、心の傷は消えない。

その日をきっかけに、私はだんだんと心を閉ざすようになった。