社会問題小説・評論板

Re: 「「貴方にはわからないでしょうね」」 ( No.9 )
日時: 2015/11/02 23:50
名前: 蛍 (ID: FpNTyiBw)

[第7話]

「…あ、うん、話って何?」

へらっとした、気持ち悪くて大嫌いな笑顔を浮かべ、亜未を見る。

「えっと…万里花のこと、ごめんね」

ごめんね…?なんで亜未が謝るの?万里花がやったことじゃない、ぜんぶ、ぜんぶ。とりあえず謝っとけばなんとかなると思った?自分の罪がなくなるとでも?…残念ながら、私はそんなに頭ん中お花畑じゃないの。

「亜未が謝ってどうこうなる話じゃない。それなら万里花に直接言ったら?やめてって」

勿論亜未がこんなことを言えるはずがない。亜未は意見の違う二人がいたら、どちらかに傾いたりしない。どちらからも好かれないし嫌われない、中立の立場を守る人だから。

「それは…」

「出来ないんでしょ?そういうさ…中途半端な優しさがいっちばん迷惑」

「でも、ほっとけない。双子だから」

「亜未ってさぁ、よく双子に拘るよね…。私が亜未と双子で、どんだけ苦しんできたかわかるッ!?」

拳を握りしめ、声を荒げる。ひっそりとした住宅街だったので、周りに人はおらず、静かな空に私の声が響いた。
亜未はきょとんとしたように首をかしげる。

「…だから、中学では双子だってバレないようにしたいの…っ。話しかけないでって、言ったじゃん…」

私の通う七尾中学校は、四つの小学校から生徒が集まっているが、私の小学校の人はほぼいない。ほとんどは、隣町の中学校に進学するからだ。勿論、全くいないわけではないので、その人にバラされたら終わり。
ちなみに万里花の取り巻きである美里は同じ小学校だった。万里花はその事をしらない様子だが、美里がバラすのも時間の問題だろう。

「でも、私は小学生の時みたいに……」

「うるさい…。もう、いいでしょ?さよなら」

そう言い捨てると、鞄を胸のあたりで抱えて家まで走った。とにかく走った、ずっと。多分今なら50mが9秒くらいにはなってる気がする。

「ただいま…」

なんだか浮かない気持ちのまま家に帰り、ベッドに寝転ぶ。
天井の染みをボーッと見つめていると、お母さん、もとい叔母さんが部屋のドアを開けた。

「あら、おかえりなさい。手洗いなさいよ?」

それだけ言い、きれいに畳まれた洗濯物をベッドに置くと、お母さんは部屋から出ていってしまった。

「…」

そのまま黙って手を洗い、部屋に戻ると、再びベッドに寝転がる。いつもはすぐやる宿題も、なんだかやる気が出なくて、机の上に置きっぱなし。
亜未への怒り、自分への怒り、万里花への怒り、死にたいという気持ち…いろんな感情が混ざりあって、よくわからなくなってしまった頭は思考を停止し、だんだんと眠気がしてきて、ついには意識が途絶えてしまった。

「…芙美ー、ご飯よー」

それから2時間は経っただろうか。
お母さんの呼び掛けで目を覚ました私は、素早く起き上がる。
しわのついた制服を脱ぎ、ハンガーにかける。あとでアイロンでもするか。

「いただきます」

大好物のハンバーグが出たのに、すこしもうれしくなかった。
なかなかご飯が喉を通らず、一言も会話を交わさないまま食べ終わった。お母さんは心配そうにこちらを見ていたが、あえて話しかけないでくれたみたいだ。それがすごくありがたかった。

その日は久しぶりに夢を見た。