社会問題小説・評論板
- Re: 愚かな女王様の制裁 ( No.5 )
- 日時: 2015/12/11 18:59
- 名前: 雪 (ID: c07RIgum)
私は、800字程の手紙をクリップで綴じ、溜め息をつくと急いでファイルに仕舞う。
「失礼します...お嬢様、勉強は...」
「ごめんなさい、今行くから」
なんの不自然のないように、普段通りに開け放しておいたドアから入り掛けた使用人に断る。
「何をしてらしたんですか?なんだか随分落ち込んだ顔されてますけど...大丈夫ですか?」
「...ごめんなさい」
使用人とは優しいものだ。私なんかには一生出来ない気遣い。もっと落ち込んだ。
「ごめんなさい」
「どうして、謝るんですか?」
「ごめんなさい!ごめんなさい...」
馬鹿みたいに繰り返す私に愛想を尽かしたのか、それとも気遣ってくれたのかはわからないけれど部屋を出ていってくれた。
「失礼致しました」
そういう使用人の姿が、次第にぼんやりとしていく。
泣きながら眠ってしまったのか、時計は30分間程進んでいた。
「...あれ」
結局何もならないまま、寝ていてしまったなんて。勉強しなきゃいけないのに。塾あるのに。
「あの、お嬢様、失礼します。もうそろそろ塾の時間です。うるさいと思うかもしれませんが... すみません」
「ごめんなさい。私に、そんなに優しくしてくれてるのに、何の期待にも応えられなくて...」
「良いんです。私だってそんなものだったし...失礼致しました。あの、無理しないで下さいね」
「.........」
そう言ってお辞儀する彼女の短いけれども黒い髪が痩せた背中で跳ねる。大きな窓から差し込む日差しで
髪が輝いた。
私は髪を払い、準備を始めた。私がやらなければならない訳では無いけれど、これくらいはやらなきゃ。
ピンク色の可愛らしいリュックサックに教科書やノート、筆記用具などを入れる。背負うとかなり重い。
私って、生きてる価値あるのかな。死んだほうがいいんじゃないの?いつの間にか、そんな事を考えていた。
本気でそんな事を考えているくらいだから、死んだ方がいいのかもしれない。
「もう、涼。車はもうとっくに来て、ずっと待ってるのよ。準備早くしなさい。 それと、ちゃんとお願いしますって言うのよ。いつもいつも遅れて」
「ごめんなさい...ママ。今すぐ行くから」
「まったくもう。準備だって自分ひとりで出来ないのかしら」
さっきから謝ってばかりだが、それは仕方が無いのだと思う。
私は生きてる価値なんかない、ただの人間なんだから。
