社会問題小説・評論板

Re: 六年一組物語 ( No.1 )
日時: 2018/01/22 14:37
名前: ぽぽ (ID: PLnfHFFW)

先生はそう言うと、

「一時間目は算数ではなく道徳にします」

 怒る時のような、強い口調だった。

 ……ふざけるなよ。

 そっと、斜め前の席の明里(あかり)が、

「あの先生の顔じゃぁ、きっと面倒くさいことになるよ。まぁ、でも……、先生は、本当に解決しようとは思ってないね、というか、解決なんてできるわけないし、ここまで沙織の悪評が広まってからじゃあ……ね」

 と耳打ちしてきた。

「そうだね」

 わたしも、うなずく。


 まず、初めに、いじめのアンケート。

 クラスにいじめはないか、だって。
 もちろんのこと、私は、無い、と書いた。
 多分、沙織以外、全員そう書くだろう……。

 さっさとアンケートを机の上に提出したあと、そっと明里に耳打ちした。

「上履き、やったの、誰だと思う?」

 明里は大きくてくりくりとした目を、くるくるとさせて、首を傾げた。そして、にっこりと笑った。

「うーん、まあ多分六年一組の女子の誰かかなぁ。でもねえ、あれだけ大胆なことするってことはねー、多分、朱美とか、加奈とか、そこらへん? まぁ、美咲(みさき)はそんなことやんないでしょー」
「まっさか、私がやるわけないじゃん! 私、リスクを冒すこと、大嫌いなんだよ」

 明里はくすくすとパーカーの裾を口に当てて笑い、美咲らしい、と。

 そして、

「もうそろそろ、席に戻ったら—?」

 そうだね、うなずいて席に着くや否や、隣の席の俊が意味ありげな笑みを見せた。

「菊知、さっきのアンケート、なんか書いたか」
「書くわけないし、そんなお前みたいにバカじゃないもん」
「俺も書いてねーわ。……『張本人』以外で書いた奴いんのかな」
「少なくとも女子はいないよ」
「おー、つうか、やっぱり女子ってこえぇ—。あ、でも男子で書いたやつもいないな」
「そうね」
 
 ちらり、沙織を見ると、まだ沙織はアンケートを真剣に書いていた。