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社会問題小説・評論板
- Re: 恋愛小説 ( No.4 )
- 日時: 2021/07/09 22:39
- 名前: 猫屋敷 (ID: wxZ0SJGK)
四章
彼と出会ったのは中学一年生の時だった。
「ねぇ、名前、教えてよ」
「……」
「話せないの?」
なんで分かったの?
そう思ったけど言えなかった。
「失声病?」
ただただびっくりして、首をこくんと縦に振った。
「俺の妹もそうなの。ねぇ、良いこと教えてあげる。」
不思議そうに顔を傾ける。
これも私の出来る数少ない反応だった。
「スマホ持ってる?持ってるならメモ機能使えるよ。持ってないなら、メモ帳を常に持ち歩いて。ペンもね。そしたら、反応できるでしょ?」
そうだ。喋れなくても書くことは出来る。
「でも、喋れるように頑張ってね。俺、お前の声また聴きたいからさ。」
また、という表現に私は少し違和感を覚えた。
でもそれは置いといて、たまたま持っていたメモ帳を広げて名前を書いた。
『私の名前は、鈴山楓』
すずやまかえで と読み仮名もつけて彼に見せると、彼はまるで初対面ではないように頷いた。
「そっか。楓ね、覚えとく。よろしくな。」
そう言って笑う君は素敵だった。
その顔が何かに毒されていたことに、私は気づいていなかった。
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